Short
□Goodnight
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「もしもし、真ちゃん?」
眠れなくて、ぼーっとしていたら、ふいにあの人の声が聞きたくなった。
ダメ元で電話をかけると、心地よく耳に響く優しい低音。
「…なんだ、まだ寝ていないのか。明日は月曜日なのだよ。」
「寝れなくて。真ちゃんの声が、聞きたくなっちゃった」
「ハァ…今何時だと思っている」
「ごめんなさい…それは重々承知で…」
「ならかけてくるな。…で、どうしたのだよ。」
「へ?」
「お前が眠れないと言うときは、大抵なにか不安なことがあったり悩みがあるときだろう」
かけてくるな。なんて言っても、話を聞いてくれる。
あぁ、やっぱり真ちゃんの声、落ち着くなぁ。
真ちゃんと話すと、なぜか落ち着く。
「明日ね……」
ポツリポツリと胸のうちにあった不安を話す。
あまり人に話したくないことや、話せないことも、真ちゃんになら安心して話せてしまうから不思議だ。
「なんだ、そんなことか。明日の朝は、お前の家に迎えに行ってやるから待っていろ。七時半には支度しておくのだよ」
話終えると、口は悪いものの、心配してくれているようだった。
この不器用な優しさも、真ちゃんを信頼する理由のひとつで。
「ほんと?やった!!」
「俺は嘘はつかん。ほら、日付も変わる。いおり、もう寝るのだよ。時間通りに起きれなかったら置いていくぞ?」
「うん。真ちゃんごめんね、ありがと。」
「…フン、おやすみ」
「おやすみ」
そう言って電話を切ると、さっきまでが嘘のように、唐突に襲ってくる眠気。
不思議と安心する。
さぁ早く寝よう。
明日は月曜日。
憂鬱なことに変わりは無いけれど、大好きなあの人が迎えに来てくれるから、朝を楽しみに待とう。