Short
□ホットココア
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「それ、やる。」
不機嫌面した宮地先輩の手にはホットココアの缶。
さっきの熱さはこれだったのか、と納得。
ありがとうございます、と受け取ると、ストンと私の横に宮地先輩が座った。
まだ怒っているのだろうか。
不安になって顔をのぞきこむとパチリと目が合ってしまって、慌てて目をそらす。
「悪かった。その、さっきの…。」
ボソッと宮地先輩が言った。
チラ、と顔を見ると申し訳なさそうな、困ったような顔になっていて。
「私も、色々言っちゃって、ごめんなさい。」
「いや、それは別に、俺が悪かったし。」
ばつが悪そうに頭をさげる。
その仕草が少し可愛く思えてしまって。
「あのな、お前勘違いしてっかもしんねぇけど、俺はお前のことめちゃくちゃ可愛いって思うし、その…大好きだから。」
「え…」
普段好き、とか可愛いとかいう単語を宮地先輩の口からあまり聞かないから驚いた。
胸がきゅーんとなる。
「ただ、高尾とか、他の奴等にあんま可愛いとか言われるとむかつくんだよ」
「宮地先輩、それ嫉妬なんじ「うっせぇ黙れ。」」
言いかけた言葉をキスで塞がれる。
さっきまでの寒さも忘れるような、溶けるようなキス。
「宮地先輩、仲直り、ですね」
「っせ、ほら行くぞ、手ェ貸せ。冷えてんだろ」
「うん」
手を繋いで部室へ戻る。
左手にはあったかいココア。
右手にはもっとあったかい、あなたの手。