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□先制点
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私の大好きな彼は。
いつも黄色い、眩しい光を放つ。
そんな光は、私の目に焼き付いて、忘れられなくなった。
きっと見ているだけなら、普通にクラスメイトをやっているだけなら、私の光は彼の目にも入らない。
ならばこちらから試合開始のホイッスルを鳴らすまで。
「ねえ黄瀬くん、バスケ部って、マネージャーとか居ないの?」
「ん?あぁ、今のとこは先輩に一人居るッスよ。」
「へぇー、一年生は?」
「一年生は居ないッス。あー…それがどうかしたッスか?」
名前を言おうとして言葉に詰まったんだなぁと思った。
こういうところは、分かりやすい。
思いきって声をかけてみれば、これが彼との初めての会話。
名前を知られていなくても仕方ない。
それしきで、傷ついている時間は無いのだ。
これ以上、彼にばかりシュートは打たせない。
「じゃあ、私マネージャーやりたいな。」
「まじッスか?ここだけの話、最初一年の女の子が、まぁ俺目当てにたくさんきたけど…みんなついてけなくて辞めたんス。そんぐらいキツイッスよー?」
「あはは、絶対大丈夫。そんな見た目だけしかみてない好きとは違うもん。」
「?どういうことッスか?」
「本気で応援したいってこと!バスケも、黄瀬くんもね?」
「え、それどーいう、」
「今はまだ言えないかなっ!あーそれと、私の名前は羽生いおりだから、よろしく!じゃ、早速顧問の先生のとこいってきまっす」
わざとらしくビッと手をおでこにあて、職員室へと駆け出す。
本当はあれ以上彼と二人という状況で冷静になれなかったから。
後ろのほうで羽生さんあとで結果聞かせてねー!という彼の声がした。
名前、覚えてくれたのか。
じんわりと頬が熱くなる。
この試合、ひとまず私の先制点。
さて、これからどうなるか。