Short
□痛覚緩和薬
1ページ/1ページ
痛かった。
私はずっと、独りぼっちで、痛くて、痛くて。
自分の居場所が無くて、帰る場所も無くて。
毎日一人で、声をからして泣いていた。
そんな私に大丈夫と、好きだと言ってくれたのが、彼氏である赤司くん。
皆が見てみぬふりをしていた私の痛みに気づいてくれた、私を痛みごと包んでくれた、大切な人。
私の唯一の、支えであり、帰る場所。
「いおり、またお父さん?」
こくりと頷けば、黙って私を抱き締めて、ごめんね、と言う。
赤司くんが謝る事じゃないのに。
私があざを作るたび、一つ一つにキスをして、ごめんね、痛いだろう、と呟いては悲しい顔をする。
私が仕方ないことだからって言うと、ひどく泣きそうな顔をする。
そうして最後にいつもぎゅっと私を抱き締める。
「赤司くんありがとう。ごめんね」
「礼を言われることはしてない。いおりは謝るようなことをしてない。」
ぎゅっ、と私を抱き締める赤司くんの力が強まる。
彼はいつも、私と同じように心を痛めてくれて、それがどうしようもなく悲しくて、申し訳ないのに、嬉しいと思ってしまう自分がいる。
「高校を卒業したらすぐ同棲しよう。僕はまだ子供だから、今いおりを助けてあげられないけど、必ず僕が幸せにする。今の辛いことも痛みも、忘れるほど君を幸せにするから、」
だから、と赤司くんが震えた声で言う。
彼の顔は見えないけれど、きっと泣きそうな顔をしているだろう。
私も、彼を抱き締める腕にさっきよりも力をこめる。
「だから、どうかそれまで生きてくれ。」
あざだらけの左腕には、生々しいカッターの跡。
本当は死んでしまおうと、追い詰められていたけれど。
「うん。死なないよ。私、耐えるから、二人で大人になりたいから、」
赤司くんの温もりが私を支えてくれるから、痛みも辛さも、耐えられる。
私はひどく弱いけれど、あなたとなら、きっと幸せを願えるから。
だからどうか、神様。
私たちを早く大人にしてください。