企画
□限定ヒーロー
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ベッドにうずくまって早2時間。
絶賛生理痛。
仕方なしに部活には休むと連絡したものの、今日に限って家に誰もいない。
普段ならば生理痛など、酷くとも堪えられる程度なのだが、どうやら今回は最悪らしい。
少し動こうとしただけで尋常じゃない痛みがはしり、寝たきりもいいところだ。
と、そんなときタイミング悪くも来訪者のようで、二回ほどインターホンが鳴った。
「だ、誰だろ…やばい起きなきゃ…」
出なければ、とベッドから降りようとしたが、また激痛が走った。
う…駄目だ起きれない…。
ごめんなさい、今だけ居留守使わせてください…と心の中で謝罪していると、扉の開く音がして、トントンと階段を登る足音が響いた。
もしや、不審者か?
少し不安になりながらも生理痛に耐えられず、横になってドアをじっと見ていると、ガチャっと音がして部屋のドアが開いた。
「え、こが…??」
そこに立っていたのはなんと、私の幼なじみであり、彼氏である小金井くんで。
「よお。ピンポンしたんだけど出なかったから、勝手に入っちゃったんだ、ごめんな。それで、大丈夫…そうじゃないな…」
お前の部活先の先輩から聞いてさー、心配だったから練習終わって飛んできたよ、とコンビニの袋を差し出しながら言った。
見ると私の好きなヨーグルトやらプリンやら入っている。
「なんかその、ごめんね…ただの生理痛なのにこんな大袈裟に…」
そう私が苦笑いすると、小金井くんはいつになく真剣な顔で
「はいそこ謝らない。大袈裟とかじゃないし、俺が心配したくてしてるだけだから気にしない!むしろ、自分の体調を気にしろよー。」
と私の頭を撫でた。
小金井くんの優しさに、胸がじんわりする。
「ん、ありがとう。」
「いーよ。その、やっぱ辛いだろ…?俺さ、男だから生理痛の辛さとか分かんねーし、何もしてあげらんないけど…」
小金井くんがぎゅっと私の手を握った。
暖かくて、落ち着く。
「ずっといおりのそばに居るからね」
そう言ってニコッとする小金井くんが、いつもの彼とは別人のように思えて仕方ない。
「なんかこが、いつものヘタレなこがじゃないみたい」
「ヘタレ言うな。ま、否定もできないけど…、俺はお前のヒーローだかんね!」
小金井くんが誇らしげに微笑んだ。
私のヒーローは、随分と心の優しいヒーローさんのようで。
そんなヒーローの優しさに、心なしか痛みも和らいだ、そんな気がした。