長編
□04私の問題
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いつもと様子が違う私に、カヲルくんがどうしたの、と声をかける。
私はと言えば、先ほど一本の電話を受けてから、泣きそうな顔をしていた。
父親からの、電話。
「お父さんがね、帰ってくるらしいの…」
「いおりの、お父さんが…?」
「うん、明日…」
お父さん、という単語がでた瞬間に、病室の空気は一気に重くなる。
そう、私が泣きそうな原因は他ならぬ父親。
元チルドレン達は、一人一人が何かしら問題を抱えた子供だったが、私もその一人で。
私のことを道具のように扱っては暴力を振るう父親に、私は心底追い詰められてた日々を送っていて。
そんな父親も私がチルドレンになって間もなく、単身赴任になって地元を離れていた。
おかげで私は一人暮らし、なに不自由なく過ごしていたのだが…
その父親がまたこちらに戻ってくるというのだ。
「わたし、どうしよう…どうしよう…」
焦りやら恐怖心やらで涙がポロポロ出てくる。
そんな私をカヲルくんが抱き締めて、手で涙を拭ってくれるが、止まらない。
「いおり…」
「わたし、私怖いよ…」
カヲルくんに抱き締められたまま、私は自分の恐怖心と戦っていた。
明日からまた地獄のような日々が待っているのだと思うたびに、涙が止まらなくなる。
完全に周りの世界を遮断し、自分の闇に呑まれそうになっていた。
だから、私は気づいていなかったのだ。
病室の外で、ミサトさんがこの話を聞いていたことも、ある場所へ電話をかけていたことも。
そして、私が救われるということも。