Late confession
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何の前触れもなく声を掛けて来た彼の事はホントに知らなくて、なのに何故だか、悪い事をしたような気分になった。
「…あの、人を間違えてたり…」
無言の彼に、耐えられなくなって問い掛ける。
しかし返事はなく、これは一体どう乗りこえるべきか考えた。このままスルーしようか?…それが出来たら多分すぐしてる。何か言ってくれとヘルプを求めて、美里を振り返った。
「…ねえ、美里。美里も何か…」
「イケメン〜!!」
「……へ?」
…でも、其所に美里は居なくて
「お名前はなんて言うんですか?!」
彼の目の前に居た。…あれは逆ナンか?目をハートにしてそうなテンションだ、呆れた。
…まあたしかに、かなりのイケメン君である。女の子に囲まれてる光景が簡単にイメージ出来て、もしかしてタラシ?と早々にうたがってしまった。
「何よ、こんなイケメン知ってたの?」
「あのね、あたし何て言ったか忘れたの?!」
一方で美里は、イケメンくんに夢中のようで…
「誕生日は何月何日?」
「……美里」
「スポーツは何しますか?」
「…美里」
「好みのタイプは!?」
「美里!!」
全く何をしてる!イケメンくんに申しわけなくて美里の手を引っ張り、丁度来た待ち望んだバスに、あわてて乗車する。
乗る気配のないイケメンくんはスルーして、バスの入口は閉まった。
「(失礼しましたー…!)」
発車するに連れて遠くなる姿に向けて、心の中で叫んだ。
「もー!何すんのよ、奏!」
「美里の方こそ何してんの?!」
申しわけなくて仕方ないし!文句垂れる美里を奥に座るように促して、その隣に座る。座る前に今一度イケメンくんを捜してみたが…もう死角まで来ていた。
「…まあ、あの人は奏に用が有るのよね。何処?何の知り合い?」
「…知らない」
「でも、アンタの名前呼んでたし」
「…………」
…其所だ、ヘンなのは。
何で、名前を知ってるんだろう?昔に遊んだ事のある人だろうか。でも考えてみても…全く該当ナシ。もの覚えの悪さが元凶か?
「何にしろ。あ〜んなイケメンにストーカーされるなんて、奏も幸せねえ!」
「それ以前の問題だから!」
胸に宿る気持ちになんとも言えないまま、車と人の行き交う景色をただ瞳に写した。