Late confession

□EX:01
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 ――連日の雨が止んで、久々に晴れた日。

 皆それが嬉しいようで、昼食を済ませるなり「木刀木刀!」とかけ出してく隊士の姿が見られた。自分も、たまっている家事をし片付けてしまおう。千鶴は勝手場を出て、廊下を歩いていた。


「……あれ?」


 その先で、向かい合って立ち話をしている2人組が見えて立ち止まる。


「…どうしたんですか?これ」

「買って来たに決まってんだろ。お前が出掛けるとは思ってたからな、…土産が団子だけじゃシケてる」

「シケたくらいが、丁度いいんですよ」

「ばか言ってんじゃねえ」


 1人は副長の土方、1人は組長の沖田。沖田の手には土方から渡されたらしい百合の花束が持たれており、白の花弁が陽に照らされてキラキラと光っていた。

 きれい…と思わず零すと、2人は此方に気付いて振り返る。


「…千鶴か」

「す、すみません!立ち聞きするつもりじゃなかったんですけど…」


 睨まれると思い、あわてて頭を下げる。しかし漂ってくる何処となく沈んだ空気はかわらず、嫌味の1つでも言いそうな沖田もだまったままだった。


「その花、きれいですね。飾るなら準備しましょうか?」


 少しでも空気を和ませたくて明るい口調で告げるが、土方はゆるく頭を振る。


「違ぇよ。これは部屋に飾る花じゃねえ…話、聞いてたんじゃなかったのか」

「聞きとれませんでした…」

「…そうか。んじゃ――」

「これは、お墓参りに持ってく花だよ」

「!総司…」

「別に隠す事じゃないでしょう?大体、千鶴ちゃんだって奏を知ってるんだし」

「(…あ…)」


 お墓参りの花?と一瞬首を傾げたが、急に割り込んで来た沖田が口にした名前にすとんと、胸が重くなった気がした。

 分かってしまうと何て言ったらいいのか分からずに俯いて言葉を探していると、この話題の雰囲気には似合わない笑い声が軽く響く。気にするなとでも言うかのようなそれに顔を上げるが、沖田は百合の花束を見ててこちらは見てなかった。


「…そう言えば、あれから千鶴ちゃんは1度も行った事なかったんだっけ?奏のお墓参り」

「はい。家事をしなければいけませんし、勝手に外出するわけには…」

「そ。じゃあ、今日は一緒に行く?」

「え!?」


 唐突な誘いに、大きな声が出る。

 嫌?と首を傾げて聞かれて、そんな事はないとすぐさま否定した。自分の立場を考えて口にしなかったが、前々から行きたいとは思って居たのだ。しかし今日は家事がたまってるし、それに1番の問題は…チラリと、土方を盗み見る。

 そう、主導権を握る副長である彼が許可を出してくれなければ意味はない。


「………」


 土方は腕をくみ、目を閉じて何か考えて居た。


「じゃ、僕は行って来ます」

「え!?」


 数秒待っても何も言わないのがじれったくなったのか、耐えられなくなったか。自分から誘っておいて、沖田はケロッとした調子で回れ右をしてしまった。ここで見捨てるのかと地団太を踏みたくなるような気分で遠くなってく背中を見詰めてると、はあと重く吐き出されるため息で背筋がしゃんっと伸びる。


「……分かった。許可を出してやる」


 一瞬だけ、耳を疑った。


「ほ、本当ですか!?」

「ああ。総司の奴、放っておいたら帰りが遅くなるからな。俺は仕事がのこってる…かわりに見張っててくれ」

「…はい!」


 とても仕方なさそうな口調であったが、許可が下りた事にホッとした。早く行かねえと置いてかれるぞと促されるまま、一度礼をしてから廊下をかける。沖田はすでに外に出てて、足音を聞き付けると立ち止まってほくそ笑んだ。


「土方さん、許してくれたんだ」

「しぶしぶ、でしたけど…」

「ま、良かったんじゃない?それじゃ、これ持って」

「わ、ちょ…!」

「よかったー、荷物持ちが出来て」

「(…まさか沖田さん、これが狙い?)」



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