Late confession

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「――と、言う事がありまして」


 凄く美味しいわけでも不味いわけでもない、何処にでも在るようなカフェでお茶の時間。共にテーブルを囲んでいる2人の後輩に向けて、あたしは1つの話を終えた。


「「…えええええええ!?」」


 ――暫くして、見事にハモる2人の叫び声。

 その反応は想像通りだが、あまりに周りの注目を集め過ぎる。このテラスに居る関係無い人達にまで、あたしの出来事を知られた。人差し指を立てて、しー!しぃー!と注意する。


「わ、わり…。でも、大人しく聞けって方が難しい話だったから」

「私も、平助君と同じ…」


 一度は申しわけなさそうにした藤堂君だが、身を乗り出して「で?」と話の続きを促された。そこまでしなくても千鶴ちゃんも先を知りたそうな目をしていて、こりゃ先走ったかなと頬を掻く。


「で?と言われましても…」


 今日あたし達は、いつかに立てた3人で遊ぶという約束を果たしていた。3人とも何かと用事があって、なかなか集まれなかったから、集まれた今では凄く嬉しい。

 そしてとことん遊び回って、少し休もうと来たこのカフェで。あたしは誰にも話せないでいた事を2人に話したのだった。


「…まさか、そんな事されちまう所まで来るとはなあ。女にそんな事した話なんて、今まで無かったぞ」

「沖田先輩、本気なんだね…」

「(何か、もの凄く照れる…!!)」


 本当におどろいているのか。ポカンとした2人のシンプルな言葉に、腕を枕にしてテーブルにうつ伏せる。


「……で、剣道部の練習試合を見に来るようにも言われた。お弁当を持って」


 何であたしがお弁当まで!勿論そう反論したら「こういう時はそう言うもんだよ」なんて、よく分からない答えが返ってきた。

 2人はだまって話を聞いていたが、何を思ってかプッと同時に吹き出す。笑われる事は気にしないけど、まるであたしが年下みたいな雰囲気で、面目無さをかんじた。


「…何で笑うのー!」

「そう言われても、…なあ?」

「ふふ。…ね?」


 そんなふうに2人だけで分かり合われて、大人しくしていられなくなって藤堂君の首に手を回した。


「あたしは、あたしはね…!!」

「!!ま、く、ぐるじ…!!」


 言葉にしたくてもしきれないこの気持ちを分かってほしくて、揺さ振る手に力が入る。く、口付け、されたんだよ!?でも沖田君は平気なカオして、また乱暴に自転車を漕ぐし、でも楽しそうだから文句も言えなくて…!

 そのうち「落ち着け、って!」と、藤堂君があたしの手をがしりと掴んだ。


「…何だかんだで奏達が仲よくしてるのが分かって、嬉しいんだよ」


 その言葉に、不覚にも力がゆるむ。


「奏は、総司の事で困ってる話しかしてなかった気がするし…」

「…あ…」


 …言われてみたら、そうだったかもしれない。困る事しか無かったと言うとそれまでだけど、本当に困る事しか無くて。て言うか、今度も困ってるんだけど!


「……仲良く、ね。してるのかね」

「してるしてる!頬にチューされて」

「平助君!大声で言っちゃダメだよ…」


 そうしてあたし達は、チラチラと見られている事に気付き、小さくなりながら其々のストローに口を付けた。


「…でね、奏ちゃん」

「…ん?」

「どう想ってるの?沖田先輩の事」


 ――ゴツン、頭をテーブルに打ち付ける。


「…たまにSだよね、千鶴ちゃんも」

「え、え?」


 この話のながれじゃそう聞かれてしまうのも仕方ないけど、あまり触れてほしくない事ではある。

 …あたしでも、自分の事はグダクダだし。

 今の問いに答えようとして沖田君の事を考えると、どうしても口付けられた感触を思い出してドキドキする。これはつまり、沖田君の事を?ううん違う。人生ではじめてされから、意識し過ぎているだけ。そうなんだと自分では思うけど、周りにはどんなふうに見えているやら。それは好きだからだよ!と言われたら…そう、なのかもしれないし。


「…あたし、イヤな女…」


 「一君の事が好きなの?」なんて沖田君が訊いてきた時も、まともな返事は出来てない。ゴンゴンと、テーブルに頭を打ち付けた。


「!な、何してんだよ」

「…本当。何してんだよ、だよね…」

「…。まあ何にしても、もう少しラクにしたら?あんまり気負うなよ」

「……え?」


 まるでそんなあたしを見透かした言葉に、間抜けな声で返す。


「いつでも話は聞くし!な?」

「うん。力になりたい」

「……」


 …ああ。あたしはなんて、良い後輩を持った事でしょう…!頼れよと言ってくれた事よりも、そのあたたかさに涙が出る。傍にあったメニューを、2人に向けて差し出した。


「よし。好きなの何でも1つ、奢ってやろう」

「まじで!?はは、何にしよっかな♪」

「平助君ったら!私達、それが目的で言ってないでしょ?」



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