Late confession

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 部活に関わる事が無かったあたしは、何処の高校は何の部活で有名だとかいう話に詳しくなかった。自分の高校の部活が賞をとったら「おお」となるだけ。ただ、それだけだった。

 だって、その実力をまじまじと見た事がないからイマイチ気分が湧かないんだ。放課後はバイトだったりするし、じゃなくてもわざわざ部活を見学しに行こうとは思わない。…もしかしてコレ、青春を損してるうちに入るのかも?



「一本!」



 ――でも。青春は、いつでも入り込んでいけるのかもしれないなー…なんて。


「…あの、今のはどうして一本なんですか?」

「ああ、今のはな―」


 今のは何で一本とる事が出来たのか等、分からない所はすぐ原田先生に質問していた。先生は嫌な顔をしないで答えてくれるから、あたしは剣道に詳しくなっていく。


「……」


 近藤先生との打ち合いから沖田君が凄い事は分かってたけど、本番になるとまた違う。それは一君も藤堂君も同じで、皆は本当に強くて。圧倒まではいかなくても、見てて安心出来る試合が進む。


「――礼!」


 …そして結果は見事、沖田君達の白星。永倉先生と近藤先生は素直に喜んで部員達を褒めて、土方先生は改善点を交えながら評価した。あたしはそっと拍手を送る。良いものが見れました。



「では。トシが言った事もふまえて、少し部活を行おうと思うが…昼休みを入れるとしよう。皆、ゆっくりしてくれ」



――で。


「皆さん、お疲れさまでした」

「おお、有り難う!」


 近藤先生の言葉で昼休みに入ろうとする部員達に、遅れて来た千鶴ちゃんが差し入れを配りはじめる。貰った部員達は嬉しそうにして、美味い!等々の感想を零していた。あたしも貰ったけど、うん…凄く美味しい。


「(ここであたしが作ったお弁当出したら、KYだよね…?!)」


 藤堂君も、一君も先生達も…沖田君も。皆が美味しそうに笑顔で食べている。よく知ってる子が作ってくれたっていう事もあるかもしれないけど、それを差し引いても…ううん。であるからこそ、KYになる事は確実になってくる。

 コソコソと、原田先生の元に向かった。


「…原田先生。あたしの鞄、先生に預けててもいいですか?」

「は?」


 鞄の中身が何なのか、幸いにも先生には言ってない。先生は首を傾げたけど、断る理由も無いしなと了承してくれた。なに、中身は帰って兄の腹に押し込めば済む話!夕食を作る手間も省けるし、一石二鳥。

 宜しくですと手を振って回れ右をして、ぐと拳を握った…ところに。


「ねえ」

「!!!!」


 …あたしの中で、いくつものもの赤信号がチカチカ光りはじめた。

 何て都合が悪い時に声を掛けて来るんだろう、計られてるとしか思えない。そろ〜と振り返ると、思った通り沖田君が居た。振り返るとそこにはいつも君が居る。本来ロマンをかんじる台詞だが、あたしにはそうでもない。


「一君達はさ、何処で昼休みにしようか話してるんだけど」

「そ、そーなの?今行くね」

「その前に。僕達は僕達で話をしよう」

「……」


 冷汗が頬を伝う。一君達の所に早く行きたい!心がそう訴える。何の話なのかはうすうす気付きながらも、何?と訊ねたあたしを沖田君は上から下までじっくりと見回した。ああ、コレはアカン。イヤン!と言って誤摩化…そうものなら、木刀でめっためたにされそうだ。


「……ねえ」

「ん?」

「お弁当は?」


 ――ハイ来ました、期待は裏切られませんでした。

 でもだんまりを決め込んで違う所を見ていたら、そのうち、沖田君の視線がチクチクと刺すものに変化していくのが分かる。見んなよ照れるだろ!なんてフザケてみようか。そんな策に勇気を使おうとしていたら、頭を鷲掴みにされた。


「お弁当、は?」

「………」


 …否、そもそも作るとか言ってないし?沖田君が1人で言ってただけだし。文句言われる必要無いよね?ね。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「作って来て、ません。すみません」


 あたしが折れる事になりました…。



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