Late confession

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 あれから、何事も無く数日が過ぎた。授業を受けて、放課後はバイトに通い…朝は勿論(?)、沖田君と登校している。


「それで、新八先生が…―」

「へ、へえ。あはは……」


 デートに誘われたあの日から。沖田君に対してあたしは、自分でも分かる程にガッチガチだ。何故か、以前までのようには居られなかった。でも多分沖田君は、それに気付いた上で、いつも通りに接してくれているのだと思う。


「…はあ…」


 気不味いと言うか、気を使うと言うか…そもそも、こんなに考える必要もなくないか?

 こんな風になってしまったのも、全部"あんな事"があったからだ。あんな事が無かったら、前のまま……前の、まま…。右手で回していたペンが、空しい音を立てて机に落ちる。外では、まるで「何かあったの?」とでも訊ねてくてるように、チチチッと雀が右から左へ飛んで行った。


「……話、聞いてくれる?」


 貴女達は何か、答えをくれる?



「聞きましょう!」

「!!?」



 と。晴れ渡った空の景色が、不適に笑う女のドアップで隠された。フフフとダイレクトに届く笑い声にぞくぞくと肩が震え、鳥肌が立つ。


「何かお困りのようですね、娘さん」

「……み、美里。イキなり出て来ないでよ!」

「何度も声掛けたわよ」

「うそ」

「本当よ」


 うるさい左胸に手を当てて、じりじりと後ろに引くあたしを見て楽しそうに笑うと、美里は前の席のイスに腰を下ろした。…あれ?いつの間に授業終わったんだろ。教室を見回すと違うクラスの生徒がチラホラ居て、昼休みになっている事に気付く。

 お弁当包みの結び目を解く美里に倣い、あたしもあわてて鞄から(兄の)手作り弁当を出した。


「今日もお兄さんの手作り?」

「うん」

「自分で作んないよね〜」

「つ、作るよ!起きたらお前の分も有るぞって渡されるの、いつも!」

「いいね、そんなお兄さん居て」

「……」


 …そう言われて嬉しいか嬉しくないのか、複雑な所である。


「……で。何呆けてたの?」

「……」

「当てようか」

「当てられる自信有るなら聞くなー」


 お弁当の蓋を開けると、中身は毎度の事ながら見事だった。見た目だけでなく、味も見事。美味しいークソーとはしたない文句を零しつつ、箸を進める事暫く。さっきからじーっと見てくる美里に、仕方無く目を合わせた。


「……何?あげないよ」

「違う。話、打ち切るんじゃないわよ」

「そんなつもりないよ」

「じゃ、話してみなさい」

「……」


 …何て言われるかなあ、楽しまれそうな気がするなあ。目をキラキラさせる姿が簡単に想像出来るけど何だかんだで、美里には…話して置きたい。ジと目で見返すと「ホレホレ」と促され、あたしはとまどいがちに口を開く事にした。


「……この前さ。沖田君に、お出かけに誘われた」

「!何処行くの!?」

「……未定」

「未定かよ〜!」


 パチンと、面白くなさそうに指を鳴らされる。楽しまれそうという予想は早くも的中したが、予想していた事なのであまり気にならない。

 しかし美里は「んー」と唇を尖らせると片方で頬杖し、もう片方の手に持った箸をピッと向けて来た。


「でも珍しいわね、面倒臭そうにしないなんて。て言うか最近は、沖田君に対して文句も無くなってるカンジ?」


 さすがと言おうか、早々に本命を突かれてしまう。でも実は、それも予想の範囲内だ。一度、肺の中の空気を全て吐き出した。



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