Late confession

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「奏達、上手くいってるみてえだな」


 体育館の隅で、いつものように近藤先生と木刀を交わし合う沖田。その姿は心無しか好調で、原田は楽しそうに口元を緩ませた。

「沖田君に誘われた」との電話を受けてから音沙汰が無く、心配していたが…。


「それはもう!奏から誘いに来るって、少し前までは考えられないよな」

「奏って、いつの間にか呼び捨てにもなってやがる。何があったのか、ちと気になる所だな」

「……何故面白そうにしている?」

「斎藤、お前には難しい話だ」


 藤堂はしみじみと頷き、永倉口調に斎藤は首を傾げる。昨日の放課後に起きた出来事は、事情を知っている面子の中で持ちきりだった。

 お出掛け…否、初☆デートはまさかの遊園地。山在り谷在りのあの2人がどんなデートをするのか、(斎藤を除いて)一同ワクワクである。


「……なあ、左之」

「何も言うな、新八。お前の考えてる事は分かってる…」

「え?何。何考えてんだよ?」

「「尾行、してみるか」」

「「!!?」」


 顧問の2人とは違って、其処までしようとは考えなかった藤堂。斎藤とともにポカンと口を開け、そんな何処ぞの漫画かドラマのような事を本気でするのかと呆れた。


「…大人気ねえ…」

「お前等は気になんねえのか?見守ってきた2人がその日を持って、カップルになっちまうかもしんねえんだぞ?」

「総司が奏を怒らしたりしねえか、心配だしな」

「……それは…」

「惑わされるな、平助」


 たしかに、今まで見守ってきた仲の良い先輩と大切な友達がもし"どうにかなる"のなら…見届けたい気持ちは、ある。心が揺らぐ平助を叱咤すると、斎藤は顧問と言えど厳しい目を向けた。


「…気になる気持ちは悪くない。だがそんな事をしては、香月に申しわけ無いだろう」

「あの奥手な奏だぞ?デートの途中で、会話が出て来ないーってヘルプ出してるかもしれねえ」

「…そ、その時はその時だ。デートなら2人で何とかすべき事、だろう」

「今有りそうって思っただろ、一君。て言うか左之さん達、それっぽい意見で俺達まで巻き込もうとすんなよ!」


 だが彼も、自分が見てきた奏の事が甦って良心が揺らぐ。大人達の主張に呆気なく呑み込まれ、後を付ける方向で話が進み掛けた…時。



「テメェ等、何サボッてやがる?」

「!!!」



 その会話の輪に、静かな怒りを持った声が掛けられた。


「……ひ、土方先生」

「原田、永倉。顧問が生徒とダベっててどうする?真面目に練習してる奴等に良くねえだろうが」

「あ、あはは……仰る通りで」

「平助、斎藤。お前等もだ」

「…申しわけ、有りません」

「……」

「見てみろ。いつもならフラフラしてる総司がダベんねえで練習を…練習を…」


 いつものスーツ姿で、目尻を吊り上げる土方。反論を許さない語気で皆を素直にうな垂れさせたが、普段ならここに居て嫌味でも投げてきそうな存在がない事にフと気付く。


「…総司の奴、今日はもう練習に入ってんのか」

「あ、ああ。調子イイみてえだぜ」

「ほう。…何かあったのか?」

「お!気になるか土方さん!それがさ、奏ちゃんとデー…むぐ」

「うわああああ蒔き散らすなよ!!」

「……デートぉ?」


 そして、さも疑わしそうに眉間にしわを刻んだ。


「…それでもり上がってたわけか、お前等は。たく…」

「お、俺は楽しんでなんかねえし!イケねえ事企んでんのは左之さん達だけ!」

「イケねえ事?」

「あ゛!テメ、俺等を売る気か!?」

「斎藤、話せ」

「!!」

「…それが、香月達のデートの後をつけるとか何とか」


 …斎藤は正直に話した。土方の指示には逆らえないからだろうが、何より、ストーカーまがいの計画に良い気はしないのだろう。バラされてしまった原田と永倉は、自分達に視線が向く前にそそくさと其処を離れて行った。

 その後ろ姿に、ふかくふかく呆れたため息が吐き出される。


「あ、にげた!」

「安心しろ。アイツ等に、後つけるヒマなんかねえよ」

「そうだと、いいのですが…」


「……まあ、上手くいってる所は見たいかもしれねえな」

「「え?」」



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