Late confession

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「女のクセに、剣術なんて生意気なんだよ!」


 進もうとした道に、同い年くらいの子供達が立ち塞がった。こうして前に立たれるのは何度目になるだろう、木刀をぎゅッと抱え直す。


「……好きな事して、何が悪いの?」

「女が男に勝てるわけないだろ?」



 ――そんなの、分かってる。


「別に、勝とうとして…ないし…」


 "女なのに"。女なのに、剣術を学びたいと言う異質なあたしが目障りらしい。覚悟はしていたがここまでしつこいなんて…。

 すると、ズイっと近付かれて肩を押された。突然の事で受け身がとれず、簡単に尻もちを付く。


「っ……」


 其処に丁度木の枝がころがっていて、手の平をズキッと痛みが走った。…どうしよう?どうしたら、許してくれるの?


「その木刀、俺に寄こせよ」

「……え!?」

「俺が使う」



 …そうきたか。だが、渡すわけにはいかない。これは、仲の良い近所のおじさんがあたしの為に、わざわざ作ってくれたんだから。

 自分の体を盾にして、木刀を抱え込む。


「何してんだよ、寄こせよ!」

「ダ、ダメ」



 抱え込んだ腕をグイグイ引かれても、必死に耐えた。この木刀を使えばあたしでも彼等を何とか出来るかもしれないけど、そんな事にホイホイ使うものではないと教えられてるし…。よし、こうなったら。


「(……素手だ)」


 子供は拳!男の子だろうが人数が多かろうが、簡単に負けるモンか。

 彼等はあたしの腕から手を放して、今度は直接木刀を引き抜こうとする。その隙を狙って、木刀が完全に抜かれる前に右拳を大きく後ろに引いた。



「あ、手が滑った」

「イ゛!!」




 ――つもりが。頭上で、ゴチンと音がした。


「〜〜〜〜!!?」


 父に叱られて、拳骨をされた時の衝撃によく似ている。…いや、同じだ。あまりに痛くて、拳骨が落ちた場所を両手で押さえた。目には涙がにじみ、口からは言葉にならない声が零れる。誰がこんな事…!うずくまるあたしに、人影が差した。


「奏、大丈夫?どうしたの?」


 …ピシリと、何かにヒビが入る音がする。


「…そ、そう、じ…」

「タイヘンだ、震えてる。…あの子達にやられたの?」

「!??」



 痛みに耐えるあたしの肩に手を乗せ、気持ち悪いくらいの声色で心配してくる―総司。拳骨したのは貴方でしょう、貴方ッ!そんな突っ込みも入れられないまま責任を転嫁され、彼等は茫然としたようだ。

 …そらそうだ。今だけは、同情する。


「か、勝手な事、言うなよ!」

「本当の事でしょ?ほら、男の子から囲まれてこんなにこわがってる」



 違う違う、拳骨でうごけないだけだし…


「…それより。まだ用があるの?大人が集まって来たし、有るなら早く言いなよ」



 そう言われて初めて、人の気配が増えている事に気付く。にじむ視界で周りを見てみたら、どこか険しい表情で大人達がこちらに注目していた。

 …頭を抱えて涙をながす女の子をとり囲んでいたら、そりゃあ良くない目で見られるだろう。


「……行こう!」

「う、うん!」



 それが分かったのか、彼等はパタパタと走って行った。



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