Late confession
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沖田君は、まだ其処に居なかった。
「……あたしが先、か」
安心したような、期待外れのような気持ちで息を吐く。まあ遅れて来たら「遅い」なんて文句を言われただろうから、これでいいのだけど。
遊園地にはバスを使わないと行けないから、バス停に近い公園のベンチを待ち合わせ場所にしていた。でも、座る気になれなくて立ったままでいる。
「(な、なんか、緊張してきたー…!)」
遊園地はとても好きだから、張りきって遊んでやろうと思ってたのに。正直、今はどうでもいい。少しでも気を抜いてしまえば、あーっ!等と叫びながら走り出してしまいそうだった。
寒くて落ち着かなくて、そわそわと足でステップを踏む。
「お待たせ!」
「!!!」
体中に、電撃が走った。
「もう、遅い!」
「すんませーん。じゃ、行こう」
――って、誰ですか貴方達…。
過剰にも、別の人達の待ち合わせに反応してしまったらしい。休日で公園と言えば当たり前っぽいカップルで、男の子が拗ねてみる女の子の手を握って歩いて行った。その後ろ姿を、なんとなーく目で追う。
「……はっ!」
…いやいやいや。何してんだ、あたし。そうだよそう!あたしだって、男の子とデ…お出掛けなんだからっ。開き直ってやろうじゃない。百面相してるであろう自分の頬をパシンと叩いて、しっかりさせた。
「おっまたせ!」
「うっひゃああああ!」
とほぼ同時だった。ポンと肩に手が乗せられて、陽気な声で告げられる。勢いで距離をとると、相手はしてやったり顔であたしを見つめた。
「おーおー、ビックリしたなぁ」
「……と、藤堂、君」
「よっ!」
…その人は、またも待ち人ではなかった。これも安心したような期待外れのような複雑な気分で、しかもからかわれたとなってはムッとなる。とった距離を詰めて、藤堂君の頬を抓った。
「イデデデデ!ちょ、ほへんっへ!」
「……」
いつもはあたしがからかっているだけに、こうなると悔しさもある。暫くそうして満足してから離すと、ちょっぴり頬が赤くなってしまっていた。
藤堂君は抓られた所を擦りながら、きょろきょろと辺りを見回す。
「……総司、まだ来てねえの?もうすぐ10時だけど」
「うん。ほら、沖田君の事だから遅れて来るんじゃないかな」
「…否定出来ねえ…」
否定してほしいんですが。
「藤堂君はどうしたの?」
「ん?ああ、それがさ!剣道部で明日、パーティやるんだよ。その買い出し」
「へえ…」
でも手には何も持たれてないから、今からお店に行く所なんだろう。わくわくと語るからちょっと羨ましくなる。その時、藤堂君の携帯が男の子らしいパワフルな着信音を鳴らした。
「やっべ、俺も千鶴と待ち合わせてたんだった!じゃあな、楽しんで来いよ!」
「あ……」
そして、電話に出ながらあっと言う間に走りさってしまう。嵐のような登場と退場に、振りかけた手を静かに下ろした。
…まあ少しだけ、気がまぎれたかもしれない。
「……」
鞄の前ポケットから携帯をとり出して、パカッと開く。