Late confession

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 暫く、ベンチの前を動けなかった。

 直前に予定をキャンセルしただけでなく、(事故だが)メールを送信出来ていない事に気付かないで…多分、2時間近く奏をベンチで待たせていた。サイアク、だ。出る言葉はそれしかない。



『お掛けの電話番号は、電波の届かない所に在るか、電源が…――』



 何度、何度電話を掛けてもつながる気配は一向に無かった。ただ同じ応答がくり返されるだけで、ムクムクと焦りが脹れ上がる。気付くとまた走り出していた。


「…奏…、奏…奏…!!」


 ――何て事をしたんだ、僕は。


「……楽しみに、してるね」

「!…うん、僕も」



 漸く、お互い近付けて来ていたのに。最初はたくさん拒否もされたけど、会い続けて漸く…奏の方から、ここに行こうよと誘えて貰えたのに。とてもとても、楽しみにしていたのに。それよりも一時の衝動に負けて、台無しにした。

 どんな言葉を並べても、自分のした事が許されるわけは無いだろうけど。何にもしないわけには、いかない。

 しんしんとふる雪が、冷たく嘲笑う。


「……はあ…は、あ…」


 一度も休む事無く、奏の住むマンションの前まで来た。あのまま何処かへ出掛けている事は無いだろう、家に居る筈だ。乱れた呼吸を直すヒマも捨てて、玄関までかけ出した……と。



「あ、れ……?」



 見慣れた姿が、マンションから出て来るのが見えた。おもわず途中で立ち止まりその姿から目が離せないでいると、相手も気付いてこちらを振り返る。そして、



「……一、君」



 元々細い目を一段と補足して、雪のように冷たい色を瞳に宿した。



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