Late confession
□18
1ページ/4ページ
暫く、ベンチの前を動けなかった。
直前に予定をキャンセルしただけでなく、(事故だが)メールを送信出来ていない事に気付かないで…多分、2時間近く奏をベンチで待たせていた。サイアク、だ。出る言葉はそれしかない。
『お掛けの電話番号は、電波の届かない所に在るか、電源が…――』
何度、何度電話を掛けてもつながる気配は一向に無かった。ただ同じ応答がくり返されるだけで、ムクムクと焦りが脹れ上がる。気付くとまた走り出していた。
「…奏…、奏…奏…!!」
――何て事をしたんだ、僕は。
「……楽しみに、してるね」
「!…うん、僕も」
漸く、お互い近付けて来ていたのに。最初はたくさん拒否もされたけど、会い続けて漸く…奏の方から、ここに行こうよと誘えて貰えたのに。とてもとても、楽しみにしていたのに。それよりも一時の衝動に負けて、台無しにした。
どんな言葉を並べても、自分のした事が許されるわけは無いだろうけど。何にもしないわけには、いかない。
しんしんとふる雪が、冷たく嘲笑う。
「……はあ…は、あ…」
一度も休む事無く、奏の住むマンションの前まで来た。あのまま何処かへ出掛けている事は無いだろう、家に居る筈だ。乱れた呼吸を直すヒマも捨てて、玄関までかけ出した……と。
「あ、れ……?」
見慣れた姿が、マンションから出て来るのが見えた。おもわず途中で立ち止まりその姿から目が離せないでいると、相手も気付いてこちらを振り返る。そして、
「……一、君」
元々細い目を一段と補足して、雪のように冷たい色を瞳に宿した。