Late confession
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あれから、沖田君は電話もメールもしてこない。それがいいし、それでいい。今回の事はもう、どうしようもないのだから。
「え〜、ここで酸素が――」
人にはそれぞれ大切なものがあるから、その事で用事が出来たとしても、それはそれで構わないと言った事は本心だ。少し哀しい気もするが、あたしはそう思う。でも今回はどうだろう?とても許せそうには、ない。あたしの心が狭いのかな。
生活は、沖田君と出会う前に戻っていた。
音楽をお供に登校して、授業を受けて、お喋りしながら美里とお弁当を食べて…あ。美里は沖田君ラブだけど、連絡とってるのかな。あの一件以来、話に出してこないから分からない。放課後はバイトか寄り道をして、見たい番組がある日は家に直行する。
ホントに、平和な日常だ。
「香月」
「はい」
「問4、前で解け」
科学は苦手なのにどうしてあたしが、と言っても仕方無い文句を唱えながら席を立つ。それなりの学力はある(つもり)なので、何とかイケるだろうか。黒板に白チョークでサラサラと答えを書き、先生を振り返った。
「よし、不正解」
「ええ!?」
クラスメイトからドッと笑い声が上がる。どや的な雰囲気を出しておいてハズカシイ!うな垂れながら席に戻ると、美里がププーッと口を押さえて笑った。後で覚えてろよ…!ぷはは〜とアホ笑いする男子にはダメージを与えられる強さで消しゴムをぶつけた。何すんだよと叫ぶと今度は彼が先生から注意される、イイ気味だ。
「(うん、あたしにはこれで丁度イイ)」
――あたしには、不毛な日々が、丁度いい。
1日何通も、何件も入るメールと電話。出たくなかったという気持ちとは少し違うが、反応しようとは思わなかった。大事な連絡が入るかもしれないのに、家に携帯を置いて出た日もある。「下に沖田が居たぞ」って兄に聞かされた後にかかってきた電話に出たのは、もう周りを関わらせたくなかったからだと思う。が、その時の気持ちは、あまり覚えてない。
「……それほど、どうでもいいんだ」
進まない方がいいと、天に見定められた関係なのだ。あたし達は。こうして嫌な思いをするから、今回をキッカケに忘れてしまえと…そういう事だ。
彼もそろそろ区切りが付いて、何をしてたんだと気付くころだろう。周りにはたくさん女の子が寄って来るみたいだし…もし少しでも傷付いてるのなら、いやしてくれる子も居る筈だ。あたし達のヘンテコな関係は、もうおわり。
――ブブブブ
だからあたしも、そろそろメールの返事はしないといけないな。