Late confession
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「んー、今回は外れたねえ」
今日は、今女の子の間で噂されているケーキを美里と食べに行ってきた。でも「うわあ〜!」と声が上がる程でもなく、夕食前という問題を押しきって来た努力も報われず。甘いモノを食べる幸せだけを味わって家に帰る所だ。
美里の家と、あたしの家に向かう道で別れている所まで来ると。美里は立ち止まってニシシと手を振った。
「ま、次は当てるわよ!バイバイ!」
「うん。気を付けてね」
「奏もねー」
それに手を振り返して、違う道を歩きはじめる。口の中に僅かに残る甘ったるさを消したくて、鞄から出したペットボトルの水に口を付けた。
「もおおおおお!俺、俺!心配したんだぞ!?アホ〜!!」
「(エエ子や藤堂君……)」
「皆も、お前の事を心配し…おわ!ち、何すんだよ2人とも!」
「早く替われ!長過ぎだっつの!」
「そうだ、1人で満足しやがって!」
「長過ぎって、1分も話してねーし!…て、あああぎしぎし言ってる!俺の携帯がぎしぎし言ってる!!」
「(原田先生、永倉先生まで……)」
……携帯壊れますよ、ホントに。
「よっ、奏」
「!…原田先生?お久です」
「久し振り。…たく、長ぇコト心配させやがって。バイト先まで乗り込んでも、シフト入ってないだの上がっただのすれ違うし」
「……エヘ」
「エヘで済ますな、エヘで」
そう言われても、エヘで済ませてしまうしかないのだ。何故って、すれ違っていたのは原田先生達の運が悪かったわけではない。あたしが、来るならこの時間帯かなと避けていたからでもある。バイト仲間が「香月さんを訪ねて来たよ」と教えてくれて、そのデータで避け易くなっていたし。まあそれを言ったら叱られるのが目に見えるので言わないけど。今ではホントに、申しわけないと、思ってる。
「……で、奏」
「何です?」
「…あー…」
電話の向こうで、原田先生が何か言い辛そうにしているのが分かった。何となく”何事か”の見当が付くと、音を立てずに空気を吸いこむ。
「本当に――」
「あ!バス来たんで、切りますね」
「え?あ、ああ、気を付けてな」
「はい。それでは」
遮るように口を開くと、ひるんだ原田先生との通話は切れた。待ってもいないバスを引き合いにした事、これも申しわけないけど。仕方、なくて。
「……忘れようよ、皆さ」
――解決したんだよ、もう。
誰も、気にする事はない。今、沖田君がどうしてるかは知らないし、藤堂君達には苦労させてしまうけど。いつかそれも終わるから。被害者…そう、被害者のあたしがいいと言うんだから、これでいいんだ。