SS
□Good Summer
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「よかったら、コレ、食べます?」
「有り難う、貰うね」
「イケメーン!」
周りにたくさんの水着女子。彼女達を嫌なカオもしないで受け入れている沖田の光景に、声を掛けようにも掛けられなかった。
海に入る前からソレか!彼は人目を引くだろうと予想はしていたけど、どうやら甘かった、予想を上回った。アレはもう…私は、孤立フラグかなあ?
「(…言われた水着にしたのに…)」
いつになく真面目にリクエストされたから断るに断れなくて、ウロウロウロウロ店内を徘回した挙句買えた水着なのに。リクエストした人がああだなんて…。
二人きりの外出が嬉しかったのは、私だけ?…私だけだろう。
「……ま、カップルでも在るまいし」
――身の程を知れ、自分。
「でも困ったなあ、ホント…」
「俺達が、力かそうか?」
「………へ?」
「コンニチワ。君、一人?」
私の存在に気付くように差し向けようかな、それくらいの事なら許されるかな。カックリとうな垂れていたら男らしい手が肩に置かれて、パッと声のした方を振り返る。
「カワイイね!俺達と遊びましょ?」
「………」
――コ、コレって……
「(……ナンパ?!)」
其所には、多分二十くらいの男が2人居た。肩に置かれた手と同じく体付きもしっかりしていて、悪くない。悪くないけども…ナンパは、受け付けない。
「私、用事を…」
「まあまあ」
すぐ近くの女子更衣室に入ろうとしたらグッと肩を引き戻され、本格的に焦りを覚える。ナンパは夏の海に定番で、誰かがたすけてくれる期待は出来ない、こんなに嫌な目をした男達なのに…。
「ここ人多いし、アッチいこうよ?かき氷、奢るしさあ」
「っ放して――」
「何処いくのかな?」
抵抗も空しく、今度は手を引っ張られる。男2人に女1人で適うわけがなく、サアと血の気が引くのをかんじた所に。かけられた冷たい声に、真夏の空気も凍る。
「…その子、僕の連れなんだケド」
見ると、いつの間にか近くまで来て居た沖田がニッコリ笑っていた。ニッコリとは言ってもまとっているオーラはドス黒く、集まっていた女の子達も呆気にとられている。妥当な反応だ。
「ゴメンね。君の嫉妬の視線がかわいくって」
でも彼の姿に私は酷く安心し、同時に左胸が音を立てた。
good summer
(お詫びに何か奢るよ)(…有り難う)