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□風邪の功名
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 クラクラする、暑い。寝たいのに眠れない。

 どうしてこんなに不安になるのか?体調が優れないからだろう。ああ、酷いのかな…。


「(……静か)」


 皆仕事で屯所を留守にしており、自棄に静かなのが余計に不安を煽る。

 ――ピチャン

 でも。水滴が水面を打つ音が、すぐ傍で聞こえた。


「……ん」

「おはよう、具合はどう?」


 額に冷たいものを乗せられると同時に、よく知った声。ああ人だと漠然とした感想を胸に右手を彷徨わせると、その人の両手に包まれた。


「……沖田、さん?」


 ――コレって、夢に違いない。


「何?…辛い?」


 彼が、こんなに心配そうにしてくれるわけがない。これは、私の望みが作り出した夢―幻なんだ。


「…へへ…すこし」


 ……なら、正直に甘えよう。


「何か、してほしい事は?」

「…ここに、傍に…」

「居たらいいんだね?ああ、わかった。安心して」


 呼吸をするのも辛い、体が重い。…でも凄く心が軽い。

 こんな夢を見れるなら風邪を引くのも悪くないかななんて、副長に叱られるような事を思いながら目を閉じる。


「……おやすみ」


 口元が、心地よく緩んだ。


 夕方。目を覚まして見ると、夢の彼はやはり居なかった。

 替わりに斎藤が居たので(気配りの出来る人だから面倒を見てくれたのだろう)、差し入れをしてお礼をしよう。

 …沖田が居なかった事にガッカリしたのは、秘密にして。







夢 か 、 真 か 。

(一君)(……)(たまたまだよね?あの子が目を覚ました時に君が居たのは、僕を呼びに来たからだよね。僕が部屋を出たころに丁度あの子が目を覚ましてたまたま君が居ただけだよね?)(落ち着、)(稽古の相手してよ)



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