アネモネ

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 クリスマスにはサンタが雪車に乗ってくると信じていた時期があるように、ヒーローや魔法使いも実在すると信じていた時期がある。僕(私)も大きくなったら平和を守るんだ!と言う夢を持つ少年少女は、一体どれだけ居る事だろう。


「……そんな話が信じられるか」


 ――所変わって、帝光中学校の保健室。


「でも!見てよ、この子!あのまんまでしょ!?」


 1人ではどうにもならないと判断したオレは、あれからすぐ帝光に引き返してきていた。ついでに、オレを置いて外周をはじめていた皆(キセキ+黒子っちと桃っち)も捕まえて、ここまでの事を話したところである。


「ああ、あのままだな。それで?お前は、その女はオレ達が考えた"魔法使い"本人だと言うのか。ノートに、ペンで、描いた、あの"魔法使い"と?」

「………そうっス」

「…大方、アイスを買いにいかされた腹いせに、ファンにコスプレをさせたのだろう。服は仕事のツテでも使って」

「んな回りくどい事しないっス!どんだけ時間かかるんスか!!」


 …それを、緑間が否定し続けていた。ちなみにオレが伝えた話は『上からこの子が落ちてきた』『話しかけようとしたら、車に驚いてどこからか現れた"タライ"で気絶した』という2つ。雑のようだが、全てのありのままだ。

 あの時、あそこは公園の傍で。並木に囲まれていて。自害しようとした子が落ちてきたとか、夫婦喧嘩か何かでタライが飛んできたとか考えるには、難しい場所に居た。…100歩、200歩譲るとしても


「……ナイ、っスわ」


 ――今、保健室のベッドの上で目を回している女の子は。あまりにも、オレ達が産み出した魔法使いと酷似してる。


「テツ君、見て見て!この子の寝顔、凄くかわいいよ!」

「そうですね」

「気絶した原因の"タライ"ってさー、もしかして、オレが考えたやつ?」

「だろ。自分の魔法で気絶するとか、バカな奴!」

「……お前達は冷静過ぎるのだよ!」


 一方で。オレや緑間を除く、部の仲間達は、ベッドを囲んで楽しそうにしていた。桃井と黒子に関してはまるで夫婦(と言うと桃っちが荒れるから言わないけど)だし、青峰と紫原に関しては子供のようにすっかりもり上っている。この子を連れて来て、ワケを話した時こそおどろいていたものの、次の瞬間には「へー!」と簡単に受け入れてしまわれたのだ。緑間のようにしつこいのも困るけど、コレはコレで困りものだ。


「つうか黄瀬ェ、女1人も受け止められねえのか?いっしょに倒れたとか、ダセー」

「うっ……!」


 ……そう。倒れた時の話は、自分でも自覚が有るから触れないでほしい。でるもでるもと青峰に弄られて、話を中断するしかなく、大きく息をついて呆れる緑間にも笑うしかない。


「……まあ何にしても、この子が目を覚まさないと何も分んないっスよ。ね?」


 自分達で何を想像しても、それは推測でしかないのだ。今はくるくると目を回して居る彼女の額には凹凸が出来ていたので、氷をくるんだタオルを当ててある。……ああ、見て見る程、オレの書いた魔法使いと似てるなあ。

 ――コレは、どう言う事ですか。神サマ。


「……おや?どうしたんだ、自棄に大人しいな」


 その時。何時の間にか姿を消していか、われ等の神サマ的存在、バスケ部主将がお戻りになられた。



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