アネモネ

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「でも赤司っち…、いくら赤司っちでもコレはどうにも」

「問題ない。こうなった理由も、大体見当が付いている」

「え!?」


 いくら世間から赤司様と呼ばれるわれ等がリーダーも、人の生き死にに関わる事ではどうにもならないだろう。しかし赤司は余裕そうに、オレからノートをとった後、保健室のテープを拝借して来た。そして、適当な長さをきって、ノートの破れ目に貼りはじめる。


「…………あの、赤司っち?」


 声をかけても、無言で作業を続けるようすに、オレ達も無言で目を合わせた。何も説明してくれない事は気がかりだが、彼の事だから大丈夫だろうと待つ事暫く。赤司は、見事にノートを元通り?にし、オレ達に其れを公開したのち――


「……見てみろ」


 ベッドを指差した。


「…ん?…………あああ!!」


 つられるまま振り返ると、其所には、透けていた筈の女の子の体が、元のイロをとり戻して居た。一瞬で自分にも生気が戻った気がして、イキオイ余って彼女の体に触れようとしたら、黒子に頭を叩かれる。代わりに桃井が触れてみたら、無事、彼女の体に触れる事が出来た。


「や、やった……」

「触れたあ……!」


 声にして喜ぶのはオレと桃井だが、周りを見てみたら、皆何処か安心した雰囲気を出して居る。黒子は棚から救急箱を持って来て、冷すだけで放置されている彼女のタンコブの手当てをはじめた。


「……て、待って!何で元に戻ったんスかね?」

「そりゃお前…気合だろ」

「何の!?」

「……涼太。オレがした事、もう忘れたのか?」

「赤司っち。した事、って……え、まさか」

「そう、ノートを直した。ノートを直したから、彼女は元に戻ったんだ」

「…………っ」


 ――其れ。其れって、つまり?


「……どう言う事、スか」

「このノートが真っ二つに破れてしまったら、彼女の存在は、完全に消えて失くなると言う事だ」


 ……んな事、有ってたまるモンか。でも今、目の前で実演されてしまった。否定出来る言霊は、何処にも見当たらない。

 今。赤司の手に持たれているノートが、フとした拍子に破れでもしたら…簡単に、彼女の姿は、自分達の前から消えて失くなる。そう確信したとたん、今にもノートが真っ二つに別れてしまいそうで、もう少し大事にしようよ赤司っち!と手を伸ばした…が、何故かスルリと避けられた。


「っ赤司っち!そんな持ち方してたら、破れますって…!!」

「ああ、そう言ううっかりも1つの手だな」

「え?」

「涼太…否、皆。心の準備をしてほしい、今からこのノートを破ろうと思う」


 今日何度目か分からない。真夏の中、体中が一気に冷えるのをかんじた。



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