Late confession
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「…戸、壊すつもり?」
夕日が、家の中に差し込んだ。
「…来る気がしたよ。ホラ、あんたの」
その光の先には、女が1人…奏が居た。
奏はじとりとした目でこちらを見てから、自分の前にあるのとは別のお膳を指差した。その雰囲気は何ら変わりなくて、家の中も何ら変わりなく見えて…ああ何だ僕の早とちりか。胸がみるみる静かになる。
「……奏」
「何?」
「…よく分かったね、僕が来るコト」
「ああ…、何かね」
どうして分かったのとか、聞くのは止めておいた。心配したの?とか、聞き返されてしまうオチがとても嫌だからだ。
「…あ、寂しかったんじゃない?」
「 誰 が 」
「へ〜?」
「あんたが、寂しかったんじゃないの?」
「 誰 が 」
奏が示したお膳の前に腰を下ろして、軽口を叩き合う。食事の香りが鼻をくすぐり、惹かれるようにお椀を持った。
ゆっくり、それに口を付ける。
「…ね」
「ん?」
「総司は、死なないよね」
…唐突な問掛けに、膠着した。
「……は?」
奏を見てみるとその目は真剣で、茶化そうと動きかけた口を仕方なく閉じる。
「…簡単には死ねない…かな。守りたい人も居るし」
まあ、たくさんの人間が刀を腰に差してる世の中じゃ安全である保証なんか出来ないけど。
それを聞くと奏は、ふわりと微笑んだ。
「…局長のコトね。そう、安心した…」
――…今日の奏は気味が悪い、安心したと簡単に言える素直な所が彼女に有っただろうか。直視するのが嫌になって、口を付けたお椀の水面を、見つめる事にした。
「…どうしたの、イキなり」
「ん?ん〜……」
「……」
味噌汁をすする傍らで、微妙な返事を耳にする。それに軽く苛立ちをかんじが…口の中に広がる味に、意識を持っていかれた。
…奏の料理にしちゃ、粗末な出来だ。
湯気はあるが冷たいし具は半生で、思わず口を離した。元々あった自分の夕飯は他の幹部に譲ったからコレしかないのに…こんなんじゃ、食べる気がしない。
文句を言ってやろう。箸とお椀を元の場所に持っていき、1つ間を置く。
「…ねえ、何?今日の――」
―その時。視界を何かが横断し、ドサリと重たい音が響いた。
何が起こったのか分からなくて、前を見たまま固まる。そして音の正体を確かめるべく、視線を斜め右下に向けた。
「……奏?」
…其処には、両目を閉じて倒れている奏。それを見たとたんにドクンと左胸が音を鳴らし、背筋を冷たいモノが走った。