Late confession
□02
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微笑んだ彼―斎藤一の姿に、あまりのテンションでカウンターを乗り出した。
「ホントに一君!?わぁ、久し振り!」
「まさかとは思ったが、本当にあんただったとはな。…だが乗り出すな、静かにしろ」
店の品ものに何か有ったらどうする。そうたしなめてくる言葉は、ホンモノの斎藤一だ。礼儀正しくてどんな場面でもしっかりしている、2年経っても変わらないその人柄に、笑ってしまった。
レジに並びに来ようとするお客さんの姿も丁度見当らないので、久々の再会を満喫する事にする。(今度は声量も落とす)
「もう、ビックリしたな〜」
「それはこっちの台詞だ、妙に身構えて居ただろう」
「…アハハ、少しワケ有りで…」
「ワケ?」
「アハハ、…アハ」
久々に再会したのに沖田の話題で潰す事はないだろう。察してくれたのか、斎藤は財布の中にカードとお釣をしまいながら「それよりも」と話題を変えてくれえた。
「希望の高校、受かっていたのか」
「うん、お陰様で!一君は?」
「ああ、俺も合格している」
「そっか」
約1年間。何度も会っていたのに、互いの連絡先も知らないまま高校に入学したというのは…今考えるととてもヘンな話だ。しかしこうして再会出来た事で、また違う感動も有って、結果オーライだ。
働いてたら知り合いに会う事もふしぎではないけど、予想もしなかった相手に胸は踊りはじめる。
「ここにはよく来るの?」
「いや、今日はたまたまだ」
…そして、ほんの少し落胆してしまった。まあ考えてみるとそうだ、これだけバイトに出ていて今まで会わなかったんだし。いつもは通学路に近い本屋を使ってるんだろう。
それならとある提案を持ちかけようとしたのだが、斎藤はストップを掛けるように手のひらを見せた。
「…話していられる時間はもうなさそうだ。勤務に戻れ」
「あ…」
斎藤の視線を追うと、これにしようと雑誌を持って来ようとしているお客さんを見付ける。名残惜しいけど仕方ない、小説を入れた袋を渡した。
「有り難う御座いました」
今日はたまたまなら、携帯のアドレスを教えて貰おうかとも思ったのに。何処の学校に入学したのかとか、2年も間が離れてたら話したい事はたくさ有るのに。でもあいにく、名刺とか洒落たものもないしな、とため息が零れた。
…イカン、またため息を吐いてしまったと頬を叩いているとフッと短い息遣いが耳に届いた。
「…また来る」
無意識に落ちていた視線を戻すも、斎藤はカウンターの前にもう居ない。サッサと踵を返して店を出て行き、あっと言う間に見えなくなってしまった。ためらいもなく帰ってしまう所は若干うらめしいけど、変わってないなあと何だかホッとしてしまった。次は連絡先を交換出来るように、アドレスと電話番号を紙に書いておこう。
不穏な出会いもあれば、嬉しい再会もあるんだなぁ。
今度は女性からファッション雑誌を受けとりながら、鮮明に2年前の事を思い出す。そのせいでミスしかけて「大丈夫?」と先輩にまた心配されたが、これは憂鬱からのものではないから心から大丈夫ですと返した。
「また、お越し下さいませ」
一君という名前が、なかなか心を離れなかった。
Promise:02
彼と出会ったのは、中学3年生の時。