Late confession
□04
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「あーっ、やっぱり家が落ち着く〜」
沖田に付き合わされて食事をすませたのち家に帰ると、全身の力が抜けおちた。
「オカエリ。夕はん、何食ったの?」
「定食」
「誰と?」
しかしそんな安息も束の間。面白そうに質問してくる兄の表情はにくたらしく、例え美里の名前を使っても「本当に?」とくり返されるだろう展開を容易に想像させられる。
これは無視が1番だが、その足を1度だけ踏み付けてからリビングの椅子に腰を下ろした。
「へ!?お、おごり?誰の?」
「僕の。嫌なの?」
「違う、違うけど…」
「なら、早く選んだら?店員呼ぶよ」
「とか言った傍からボタン押すなァ!!」
踏まれた足を抱えながら訴えてくる兄の声は無視して、甦るのは先程までの事。珍しい…と言えるまでには彼・沖田の事は知らないが、今日はおどろかされた。
よくよく考えると沖田と寄り道したのは初めてで、正直「おごれ」と高ってくる印象があったのに…。
「…調子狂う人だわ…」
イジワルなのか、違うんだか。
「……あ」
そこで、サッと別の事に気が向く。
わすれてた!と1人言を零して携帯を開き、右ポケットの中にあるものを摘み出した。
「(…教えてくれたんだし。送ってもいいって事、だよね…?)」
――斎藤がくれた、携帯の番号とアドレスが書かれた1枚のメモ。
簡単に作られたアドレスは斎藤らしい。打ち損じのないように1つ1つ見比べながら入力する。アドレス帳への登録がすませ、今度はメール画面を開いた。
< title:香月です。
text:こんばんは(^-^)早速メ−ルしました。名札、有り難う!
tel⇒XXX-XXXX-XXXX >
1件目はこんなもんだろうかと打った文章に、かっくりとうな垂れる。
「…味気ない…」
女の子なのにこんなんでイイのか!他の女の子ならもっと気が利くメールが作れるだろうと思うと自分が情けない。まあ斎藤ならそんな所に拘らない事を信じて、送信、した。
――ブブブブブ
「!」
「!?ちょ、今コワイ所なんだぞ!」
すると、席を立とうとしたのを見計らうかのように携帯が震え出す。それが立てる音に兄が過剰に反応し、上擦った声で叫ばれた。ゴメンと軽く返しながら携帯の画面を見る。
「…誰だろ…え、一君?」
早っ!まさかこんなにすぐ返事が来るとは…返事はないかなとすら考えた所の事に、多少胸が高なった。
< title:RE:香月です。
text:気にするな。それより、今ヒマか? >
返された文はこちらから出したメールと大差ない。余計な事は書かない、用件のみのそれにまた斎藤らしさをかんじて苦笑する。
そして、とくに宿題もないし「ヒマだよ?」とこれまた簡単な返事を送り返した。
――ブブブブ
「!」
送信完了の表示からまたすぐ、携帯が震える。だが今度は大きな違いがあった。メール受信ではなく、着信、の表示。
「え、部屋行くん!?すぐ戻れよ!」
携帯を手に立ち上がると、今度は鳴き声の兄にそう事を言われる。こわいんだったら見なきゃいいのにと文句を投げる時間すら惜しく、足早に自室に入ってドアに背中を預けた。
そして、少しとまどいながら親指を携帯のボタン…通話ボタンへ運ぶ。
「…は、一君?」
おそるおそる耳に携帯を当てて、名前を呼びかけてみた。
『ああ。…すまない、本当に平気か?』
「平気!基本ヒマしてるから」
『そうか。それなら、いい』
「わあ――!!」
『……今のは?』
「…あはは…そんな事より!何かあったの?」
今まで直接話した事しかなく、こうして何かを介すると逆に緊張するが。兄の叫び声がまぎらわせてくれた。
斎藤は未だに気になる雰囲気を伝えては来たが、きり替えたようで…
『総司の事で、話をしたくてな』