Late confession
□EX:02
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「欠かさず稽古に通ってくる奏君が、ある時、来ない日があってな。それが2日間ほど
続いた日の事だ…――
奏君が家出!?」
唐突に奏君のご両親が訪ねて来られて、娘は何処に居ますかとわけの分からない事を仰られるから話を聞くと…奏君の家出を知らされた。ご両親の方も頭に来てたようで、どうせ「試衛館に居るだろう」とたかを括っていたそうだ。
しかし宛が外れて、真青になられたよ。
「何故そのような事に?」
「…わたしが、少し辛く叱ってしまったんです。その事で夫とよく話し合って、こうして迎えに来たのですが…」
「…親が子を叱るのは、当たり前の事でしょう。どうか、お気をおとさず」
「…はい…」
親子間の問題に口を出すわけにはいかんからな、詳しくは聞けなかったが。
「総司。奏君が行きそうな所を知らんか?」
私に心当たりはなかったから、後ろでずっと無言の総司に声をかけると、総司は床を見ていて返事をしなかった。もう一度声をかけると「な、何ですか」と焦って答えて来てなぁ。今思うとあれは、奏君を気にしていたのだろう。
「…知りませんよ、あの子の事なんか。放って置けば戻って来ますよ」
「総司」
「…近藤さん。こうしてたって埒が明かねえ、捜しに出ようぜ」
「…そうだな。では私達の方でお捜ししますので。行き違いになった時の事を考えて、ご両親はご在宅ください」
「はい、申しわけありません…」
「……」
そして、苛立ったようなトシの提案で外に捜しに出た。
「それから、どうなったんですか?」
「雪村君は、1番に誰が見付けて来たと思う?」
「…キッカケになった日って言うくらいですから、それは…」
「そう!総司が奏君を連れて戻って来た」
あっさりと結末を明かした近藤は、カラカラと楽しそうに笑う。話すのに、話を聞くのに夢中になっているから互いに団子には手を付けられていなかった。
「何処に隠れていたのか、泥だらけになった奏君を総司が背負って」
「背負って?!」
「はははっ!ああ、加えて2人共大層な仏頂面でな。本当は大喜びでかけ寄る所を、茫然と迎えてしまったよ」
「(…えー…)」
沖田が誰かを背負って、の光景を想像してみ…ようとした。だが全く浮かんで来ない。あの沖田が誰かを背負ってやると言う所も、背負ってと言われて了承する所も。
まあ、だから"キッカケ"になった日なのかも知れない。2人の間に存在するヘンな距離を近付ける、何かが。
「沖田さんが奏さんを見付けて、戻って来る間に何かあったと言う事ですよね。何があったんですか?」
ほんの少しわくわくしながら、好奇心に染まる口調で先を促した。
「…それが、実はよく知らなくてな」
「ええ!?」
だが返ってきたのは期待したものではなく、落胆の声を思わず上げてしまう。
「一度何があったのかは訊ねたんだが…総司は、奏君がダラダラしてたから連れて戻ったの一点張りでな」
「はあ…」
「ケンカ仲だっただけに、何かあったとしても話し難かったのだろう」
「……なるほど」
仏頂面をした2人の間に起きたキッカケ。それを聞けなかったのは残念だが、そこは2人の間だけに留めて置きたい事に違いない。同じようにかんじたから、近藤も今まで知らないで居るのだろう。
子供だなぁ、くすりと笑みが零れた。
「その後、奏君はご両親とも仲を直してまた道場にも通うようになったさ」
元通りになって沖田達の仲にも変化があって、それがどんなに嬉しかった事か。近藤の満ち足りた表情を見たら、じんわり伝染してくるようだ。そんないい気分に浸りながら、団子をぱくんと食べる。
「まあ、ころっと仲がかわったと言う事ではないがな。ケンカは止まなかった…」
「あはは…沖田さんも、言ってました」