Late confession
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「これから、少しずつ。僕の事を知ってほしい」
…まあどうして、沖田君はそんな事をサラッと言えるのかね。よく女の子に囲まれてるから言い慣れてるのかな?話とは逸れた事を考えていると、まるでそれを見透かしたかのように、沖田君にぐっと詰め寄られた。
「…そ、そんなの、気にしなくてもいいのでは?」
聞くなら貴方の事を教えろ…なんて、見返りを請うつもりは無いし。そう言うのがあっても、何かオカシい気がするし。
でも、沖田君は首を横に振った。
「君は、一君とか平助の事は多少なりと知ってるでしょ?」
「まあ、同じ中学だったし、塾が同じだったし…ね」
「それが少し、気にくわない」
「……」
――そう言われましても…
「でもそれは、アタリマエの事なんだよね。一君達は僕より速く君と出会ってるんだし。…僕は夢の中で"君"を知ってるから、君も僕を分かってくれている気で居たんだ」
何て答えるべきか迷うあたしに追い討ちをかけるような話に、頬を掻く指の動きが止まった。今のあたしは、どんな表情をしているんだろう?けっして良くはないみたい。沖田君は眉をハの字にして笑うと、あたしの頬に、指を滑らせてきた。
「!!?」
「夢の中で君とそっくりな人を見てても"今"の君を知ってるわけじゃ、ないのにね」
その指が触れたとたん、カッと暑くなるのが分かる。今まで男の人にこんな事された事ないもん仕方ないでしょう…!顔を背けたかったけど、背けられない雰囲気だった。
それを見透かした上で気を使ってくれるのか何なのか。とくにはからかって来ずに、沖田は話を続ける。
「"今"の君の事を知りたい。僕の事を、知ってほしい」
少し身じろぎすると、するりと、頬には指先だけが触れる形になった。
「…前世での事がどうのこうのって言うのは、もういいの?」
「…半々。でも、前世の事があるから、気になるから君と仲良くなろうとするんじゃないよ?これは"今"の僕の気持ち」
「……」
「まあ、君と出会ったころは…前世の事だけを目的にしてたかも知れない。夢の中でかんじる気持ちに、出来事に、囚われてた」
君ではなく"君"を見付けて、喜んでいたのは僕ではなく"僕"。それが僕の気持ちだと今までカン違いしてたんだね。…あたしの頭が混乱してきた。
「……一君とか、左之先生に言われて。はじめて考えた気がするよ」
沖田君は目の前に居るあたしを透かして、何処か遠くを見る目をする。何を言われたのか気になったがふと心当たりが過り、サアッと頬が冷まされた。
「あ。僕に言われた事、一君に話したんだってね」
「(わあああ…!!)」
見ていられなくて、明後日の方向に目を背ける。あたしが話した事、沖田君に話したの一君!?叱られるって一君なら分かりそうなのに…!じんじんとイタむ米神を押さえた。
「そそれはねあの!成り行きと言うか、でも、話を蒔き散らすつもりは無くて…!」
「?…ああ…怒ると思ってるなら、気にしなくて大丈夫だよ」
「……ホント?」
コク、とだけ頷き返される。
自分で言うのも何だけど「これは僕達のヒミツね」なんて話と思ってたから少しおどろいた。まあ許されるならとホッとしてたら、「それと」と沖田君の声のトーンが変わったのに気付くのが遅れた。
「君はさ、一君の事が好きなの?」
「ぶふ…!!」
…あわてて口に手を当てて、吹き出しそうになるのを防いだ。いきなり何を!と振り向くも、急な事で混乱した頭では沖田君の心は読めなかった。
「……は、は?」
なんとか、それだけ返す。