Late confession

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「ああもう、頭がイタイ〜…!」


お弁当は無いって言ったあと、沖田君から下される天罰は少々長かった。じんじんとする頭に手を当てながら、涙まじりにグチを零す。


「……奏さ、何で作って来なかったんだよ?言われてたんだよな?」

「え?…あ〜…」


 お昼は体育館から近い、日当たりが良い所で過ごす事にした。沖田君は「お昼買って来る」って今は居なくって、沖田君とあたしの事情を知っている友人達だけが集まっており、話し易い空間が出来ている。

 藤堂君の言葉に、チラッと千鶴ちゃんの方を見てしまった。


「?」

「!そ、それがさ!課題が多くて、徹夜してたら朝起きれなくって…」

「……香月がしそうな事だな」

「ぐ」


 ?と首を傾げられて、あわてて言いワケを作る。少し苦しいかなと思ったけど一君の一言がたすけとなり、この場は何とか乗りきれた。かわいい後輩が原因だって言う先輩が在ってたまるもんか、隠し通すべきだ。


「本当に…香月がしそうな事だ」

「……へ?」


 ちびちびとお茶を飲みながら自分を叱っていたら、一君は何故か同じ言葉をくり返してきた。その声音は1回目とは感じが違う気がして見ると、仕方なさそうな、呆れるような…複雑な面持ちの一君と目が合う。

 ――コレは、気付かれてるな。

 そして、声は無く「…あほ」との口パクで伝えられ、気付かれている事がはっきりした。あ、あほて…!目で訴えたが、はあと肩をすくめられてしまう。


「まあ、お前もたいへんだろうから仕方ねえけど。体調崩す事だけにはなるなよ?」

「うん。気を付けてね?」

「…有り難う、2人共」


 …否。あほでも何でもいいか、天罰が下っただけでほかにはどうって事無いんだし。


「(…でも、お昼を買って来るって事は…準備してなかったんだ、沖田君)」


 それは、悪い事したな。戻って来たら謝ろう。…自分で招いた結果なの少し後悔してしまって、小さく笑った。



「奏ちゃん」



 と、うしろから呼び掛けられる。

 振り返った先には沖田君が居て、お昼を買って帰るには速くないかと目を瞬かした。そうしていると沖田君は傍まで来て屈み、無言であたしの手をとる。そしてグイッと引いて、逆らうひまもなく立ち上がる事になった。


「…ん?」

「来て。あ、一君達だけで食べててくれる?部活までには戻るから」


 問答無用で連行される。え、皆でお昼を食べるのでは?何処行くの。ハッとした藤堂君が「どうしたんだよ?」と声をかけてくれたが、沖田君が答える気配はない。よく分からないまま、遠くなる一君達に向けてたすけを請うように手を出して…おわった。





「あの、ね!今日はホントにすみませんでした。なのであの、お叱りはもう許してくれないですかね…!」


 ぐりぐりされるのはもう遠慮したいので、あたしは反抗し続けていた。でも沖田君は「だまって」とか「うるさい」とかしか言わなくて、危険度レベルは上がる一方である。

 あたしの手を引く沖田君の背中。見るのはこれで何回目になるだろう?


「あ!そ、そうだ!お昼ごはん代はあたしが出しますから…」

「……あのさ」

「何でしょう!?」


 申しわけなさと恐怖が両立するあたしを知ってか何なのか。一君達と居た場所から5分程離れた所まで来ると立ち止まった沖田君に、あたしはビクゥ!と肩が揺らした。沖田君は一拍置いて振り返ると、どうしてか酷く呆れた表情を見せる。


「何でそんなに怯えてるの?…まあ、今はあれ見て。あれ」

「あれ?……」


 手をつかまれたままなので、目だけで示された方を見た。その先には、おそらくこの学校が設けてあるのだろうベンチが並べて在り、そのうちの1つの上には…見覚えのあるものが置かれている。

 …あれ、は…!!言葉を失くした。


「お弁当、持って来てるんじゃない」

「……」


 しかもあろう事か、お弁当の蓋が全部開かれていつでも食べれるようにされてあるのだ。あれは、たしか、原田先生に預かって貰うようにおねがいして…。


「何で?」

「ん?実はさ…――

「?左之先生。女性ものの鞄なんか持って…良い人でも見付かったんですか?」

「ばーか、奏に預かるように頼まれたんだよ」

「え?…何が入ってるんですか?」

「何だろうな。俺もし…ってオイ!?何開けて…!!」


――て、言うわけ」

「!!」


 女の子の鞄を勝手に開けるとは!人差し指を向けて文句を言おうとした…が、お弁当を持って来てないと言った時と同じオーラを沖田君は放っていて。向けようとした指を、そろりと元に戻す。


「お弁当だって分かったら、腐ったらわりぃしって譲ってくれたよ」

「(原田先生〜…)」

「……何で、うそ吐いたたの?あんなに作って来てるのに」

「……」


 またグイグイ手をひかれて、あたし達は並んでベンチに座った。



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