Late confession
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沖田君はあの日から、毎日迎えに来てくれた。ボールが当たった余韻で何かあったらと心配してくれて。あたしは何度も「もう大丈夫だよ」と伝えているけど、今日まで「うん、分かった」と頷いてくれた事は無い。
「変わった事は?」
「ううん、無い」
「そう」
「……」
心配し過ぎにも程が有る。あの、抱きしめられた時も。頬に口付けてきた時のお茶目な雰囲気は全く無くて、死んでしまうわけでも無いのにとても真剣で。あたしは…あたし達は、以前までのリズムを失くしていた。
チラッと、沖田君を盗み見る。
「……何?」
「!ううん、何でも」
……何を話したらいいのか。
「……」
「……」
大体いつもは、沖田君から話かけられていた。面白い話も失礼な話も、今考えてみるとホントにいろんな事を。その人がどうだ。俯いたまま口を閉ざし、たんたんと歩き続ける。
以前のテンションは何処にいったのか、どこか沈んだままなのだ。
「(こ、ここはあたしが…)」
たまには何とかしないと、この場を!グッと拳に力を入れて勢いよく振り向いた…のはいいが。沖田君はまたもこっちを見ていて、勢いは引っ込んでしまった。
「……」
「え……あ、あのう?」
「……ねえ」
「うん?」
「もう、本当に平気?」
そして聞かれた事は何度目になるか分からなくて、あたしはポカンとした。こんなにピンピンしているのにまだ心配だと言うのか。さすがに可笑しくて、くすっと笑ってしまった。
コレはもう、はっきりさせて置かないと。
「ダメそうに見える?」
「……」
「気を失っただけだよ、気にし過ぎ――」
「気にするに決まってるだろ!」
…鼓膜を突く、大きな声が響き渡る。
「……え?」
何が起きたのかと、それだけしか返せなかった。ただ目を瞬かせて、キッと眉間を寄せる沖田君を見つめる。沖田君はガシッと肩を掴んでくると、絞り出すように喋りはじめた。
「僕は奏が…奏ちゃんの事が心配だ。あんなボールが当たったんだ、気を失ったんだ。気にしない方がムリ」
「……沖田君…」
「あの1年も1発くらい殴りたかったのに、土方先生は止めろって…」
「……」
「…僕が、気を付けていたら…」
そしてだんだん、失速していく。もう言葉が見付からなかったのか、軽いノリで言ったあたしに言ってもムダだと思ったのか。どちらにしても、凄く申しわけ無かった。
だって、本当に心配してくれてる。
「…有り難う。ホントにもう、大丈夫だよ」
でもあたしに言える事は、これくらいしか無いから。どうしたらしっかり伝わるだろうと、肩に乗った沖田君の手に、おそるおそる手を乗せてみる。…竹刀を持つ手がこんなに厚くて、大きいなんて知らなかった。
……竹刀?………あ!!