Late confession
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「斎藤、また明日な!」
「先輩、お先に失礼します!」
「ああ、…おつかれ」
今日は部活が少しだけ早く終わって、先に着替えをすませた部員達が次々に更衣室を出て行く。鞄は在るが藤堂達も何処かに行っており、気付くと自分1人だけが残されていた。
水筒の中身を2口程流し込み、ふうと大きく息を吐く。
「……最近は、毎日が落ち着かないな」
飽きない…の方が、聞こえはいいだろうか。最近の事を振り返ると、苦い笑いが零れてきてしまった。
「…本当に…」
久々に再会した人が、まさかよく知っている男に付きまとわれていて…他には藤堂達とも関係が有ったりと、今思えばとんだ巡り合わせである。
まるで。元々"在った"かのような輪で、噛み合いも良い気がした。
「……デート、か」
不意に、練習前に何度も耳にした言葉が甦る。あの2人がデート…改めてデートと名付けられると、なかなか光景をイメージ出来なかった。
「(と言うか、デートとは恋人同士がするモノではないのか?違う…のか?)」
考え出したらきりがない。
「ヘルプ出してるかもしれねえだろ?」
そして次には、何となく原田の言葉が甦る。自分を仲間に招き入れようとする口実ではあったが、自分で解かないとと塾の宿題と睨み合う2年前の香月の姿を思い出したら…なかなかリアルにありそうな事で、今でも否定出来ない。
暫く耽ったのち、いつの間にか左手が携帯に伸びていた。
「……」
発信履歴の中から目当ての番号を選び、迷わず通話ボタンを押す。すぐにプルルと言う呼び出し音が始まって、3回程流れるとそれはプツンと終わった。
『――もしもし。一君?』
入れ替わりで、香月の声が聞こえる。
「…急にかけたりして、すまない」
『ううん、平気!どうしたの?』
「……どうして居るか、気になってな」
『へ?』
香月の言う通りだ、どうしたと言うのだろうか。もしも彼女がヘルプを出したとしても2人で何とかするべきだと言った自分に、間違いはない筈だ。
でも、デート"前"の、今は……。
「色々、有ったからな。最近は」
『あ…アハハ、ご迷惑お掛けします』
前世がどうとかワケの分からない事を言われて本気で困ってる香月を見た時は、本当に心配したものである。何か出来る事はないか?しかし総司が必死なのも知っていたから、自分なりに葛藤もした。
「まあ、そんな日々があってこその今日…だな」
『ん?』
「いや」
家族の、兄妹の声だろうか。ガハハハと派手な笑い声が電話の向こうから聞こえてくる。うるさくてゴメンねと言う香月の口調も思ったより明るく、すッと胸が軽くなるのをかんじた。
心配無い、この調子なら…――
『あああああああ!』
「!?」