Late confession
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「……ねえ。本気で拳骨したでしょ?」
「何のコト?」
子供達も居なくなって、大人達の注目も外れる。痛みもようやく落ち着いて、話せるようになった所で。同じ苦しみを合わせてやろうとした拳は、届く前に受け止めてしまわれた。
「何であたしが拳骨……」
十中八九、あの子達が悪かったのに…たすけ方が雑過ぎる。もう少しこう…。
「行くよ」
そうこうしているうちに。何事も無かったように立ち上がると、総司はサッサと歩き出した。その手にはいつの間にか…あたしの木刀が持たれている。
あわてて、後を追った。
「自分で持つ」
「手の平のケガ、手当てしたらね」
「え」
――気付かれ、てた。
「……あの子達、また来るかな」
「来るだろうね」
「……」
「そしたら、さっきみたいに、また僕が助けてあげるよ」
「それはイヤだな」
…本当に叱られるべき奴はココに居る、間違い無い。気付かれないようにべーッと舌を出そうとしたが、助けられたのは事実なので、止めた。
「ねえ。女が剣術を学ぶのって…そんなにヘンかな?」
「気持ちは分かる。でも、奏に"女の子"は高嶺の花だし」
「どういう意味」
あたしもね、女は出来てアタリマエと思われる事は出来るようになろうって学んでるんだから!…とは、言わない。
余計にからかわれてしまう。
…べーッと、少しだけ舌を出した。
「僕が無視してたら、殴られてたあの子達の方がかわいそうだね」
「あたしは、悪くない」
「ていうか。奏も、流石に1人じゃ適わないか」
「…助けてくれるんでしょ?」
「いつも運良く助けられるわけ無いでしょ」
「なら、迎えに来てー」
「違う道を通ったらいいじゃない」
「あ、そか」
―あたしが剣術を習えば習うだけ、あの子達の気に障るかもしれない。だから、これからも道を塞がれる事があると思う。で、総司に助けられる。
多分、そのくり返し。
「……う」
そんな事を考えたら、何故か涙が出てきた。言い表せない気持ちが昂って「うわあああん!」と声にしたら、総司が呆れた表情で振り返る。うるさいと言われても、反発したくなって寧ろ声を大にした。
「ケホ…わああああん!!」
「……」
呆れてあたしを見る目が、暫くしてまた前を向く。するとその背中がだんだんと近付いて来て、気付くと
肩を並べて、総司と歩いていた。