Late confession
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「……うん、イケてる」
メイクも上達した、少なくともいつもよりはイケてると思う。美里と選んだ洋服を着た自分を上から下まで見回しながら、自分でそうホメてみた。
―沖田君は何て言うだろう?服の好みは人それぞれだしなあ。
「うわ!何、自棄にお洒落してんな!」
うーんうーんと唸っていたら、食パンをくわえた兄が部屋に入って来る。
「…家の中で食べながら歩くな。そしてドアを開ける前には――」
「ノック?失礼な!したし!」
「え、ホント?…ていうか、何か用?」
「休日なのに朝からパタパタしてるからどうしたんかな〜と」
口を出されると厄介なので、兄には今日の事を教えてない。でも…兄も"男の子"に分類されるし、参考までいかなくても気休めにはなるかな。
「…ね。今日の服、どう思う?」
「ん、かわいい」
「ホント?」
「俺は、ダメな時はダメと正直に言う」
逆に言うと、乙女心が分かれない奴。
「…そっか」
やっぱり、誰かに評価して貰う事で一番安心出来た。イケてる!今度は、自信を持ってホメた。
「んで、何処行くん?」
「ナイショ」
「ええーナイショかよー」
食パンをくわえたまま中に入ろうとした兄を外に押し出して、忘れものは無いかチェックする。最低限持ち歩くように言われたメイク道具は入れたし、携帯も入れたし。
家を出るには少し早い気がしたが、余裕は持った方が安心だ。
『今日は雪が降るでしょう。お出掛けの際には、十分にあたたかくして…―』
「うわ、雪だと。奏、マフラーしてけ」
「有り難う。行って来ま〜す!」
「おう、気ィ付けろよー」
置き忘れていたマフラーを玄関まで見送りに来た兄から受けとり、早足で家を出る。ドアが閉まりきる前に不吉な笑みが見えた…気がした事にして、靴がヒールなのでエレベーターに乗り込んだ。
中には先客、よく下で遊んでる男の子が居た。
「おはよう。お出掛け?」
「ああ!デート!」
「……え、デート!?」
――今時の、子供って…。
本当なら「子供にデートなんてまだ早い!」と定番の台詞でも言いたい所だが、嬉しそうにしているのを見たら、そんな事はとても言えなかった。
「…車には気を付けるんだよ。雪が降るらしいから、風邪を引かないようにね」
「ネーチャンもな!」
好きな人と過ごす時間が幸せという気持ちに、年の差は関係ないのだ。1階に着くと、いち早く走り出す小さな背中が逞しく映る。あれはイイ男になりそうだ。等と考えていたらドアが閉まりかけて、あわてて外に出た。
「うう、冷える…!!」
たしかに空は、今にも雪を降らしそうな雲で覆われている。
「……待ち合わせ、何処かお店にした方がよかったかな」
――もし、もしも先に来てたらタイヘンだな。