Late confession
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奏が倒れてから、1週間が過ぎた。
「…あ〜あ、どうなるのかな」
生徒達が集まって、賑わう昼休みの屋上。グラウンドが見える所に座ってお弁当を突付きながら、平助が落ち込んだようにそう零した。元々微妙だった空気が余計微妙になり、永倉がポカン!とその頭に拳骨を落とす。
「イテ!何すんだよ!」
「辛気臭いんだよ、もう少し楽しくなる話出来ねえのか?」
「…でも…」
「んなカッカすんな、新八。気になるのも当たり前だ、…もう1週間だしな」
「……」
それを、原田が落ち着いて宥めた。いつもと違って力の抜けたやりとりを前に、斎藤と千鶴は下を向く。何故こんな事になってしまったんだろう?ホントなら、わいわいとうるさいくらいなのに…。
「仲直り、出来ないでしょうか…?」
「そもそも、奏と連絡が付かねえしな。携帯通じた奴、居るか?」
「ううん。常に電源きれてるか、留守番受け付けてくれねえ設定になってる」
「そら、俺達とも話し辛いわな…」
1週間前のあの日、総司が斎藤と学校に戻って来て「奏は風邪」と聞かされてから何も進展はない…が。あえて言うなら、昼食の席に総司が参加しなくなった事だろうか。仕方ない事ではあるが、ぽっかりと空く1人分の穴は少し寂しかった。
「……」
そう皆が沈む中。斎藤は、ある人と電話で話した事を思い出していた。
『もしもし、イチ君?…わり、奏の携帯から勝手に番号盗んだ』
「…いえ、問題ありません」
そのある人とは奏…ではなく、奏の兄。奏の風邪もそろそろ治ってきたかと考えてた、木曜日の夜の事だ。
『…イチ君にはお礼言えって言ったんだけどさ。奏の奴、なかなか電話したがらないんだよ』
「…ムリもないかと。それより、風邪の調子はどうなんですか?」
『?ああ、もう心配無い。今週はようす見るけど…月曜からは復活出来る』
「そう、ですか。安心しました」
『有り難うな、イチ君』
「一、です」
うなされる彼女を見ているだけしか出来なかった時は歯がゆかったが、少しでも力になれたなら本当によかった。…と。電話の向こうで、ケタケタという笑い声が急に静かになる。どうしたんですかと口を開こうとした時、はあと短いため息が聞こえてきて言葉を呑み込んだ。
『……沖田とか言う奴でなくて、イチ君がデートの相手だったらなあ』
妹を哀しい目に遭わされた、兄の心境。いや、家族でなくとも頭にくるだろう。それを考えると、何も答えられなかった。
「あと2日過ぎたら、バイト先に訪ねてみるか?」
「あ!そっか、バイト先!!」
「おいおい、シフト分かんねえだろ」
「張り込み…しか、ないですね」
奏を心配してあれこれと考える4人を、何処か遠くにかんじながら斎藤はお茶をすする。そして何気なくグラウンドを見てみたら丁度、総司を見付けた。
ただ歩くその姿は、正直…なさけなくて。何も見てないフリをして、グラウンドに背を向ける。今、彼に手を差し伸べてはいけない。誰も。
「(……俺達は、あくまで第3者だ)」
――全ては、あんたの責任だ。