銀土部屋
□現実で起きないことは理想でも起きない
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「ちょっとおじさんから折り入って頼みがあるんだけどぃよぅ。」
そう言って松平のとっつぁんに呼び出されたのが数時間前。
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最近、攘夷浪士によるテロ事件が多発している。今回はその極秘捜査を、とっつぁん直々に言い渡された。
「で?場所はどこなんだ?」
「それがよぅ。ちーとマニアックなとこだから、お前にしか頼めなくてなぁ。」
「あぁ。攘夷浪士捕まえるためだ。身体だって何だって張ってやるぜ。」
久しぶりの潜入捜査に、腕が鳴る。
「いい心構えじゃあねぇか。おじさん嬉しいよ〜?」
そう言うと、今回捜査に入る場所の写真と地図が手渡された。
「カマっ娘倶楽部ってぇんだ。」
「……え」
何故よりによってこんな場所なんだ。こんなとこ自然に行ける訳がない。かえって俺や総悟、山崎みたいな若者が入ったら、それこそ不自然である。
「一体どういう訳でさぁ。本当にこんなとこで取引なんて行われるんでしょうね。」
「ったりめぇよぉ。こういう場所が、奴らにはやりやすいんだよぅ。」
「でもだからって…俺らが行かなくてもいいんじゃねぇか?」
「お前ぇはアホかぁトシィィイ!!!」
ダン!と松平は掌をグーにして机を叩く。
「お前ぇなぁ。面がいい奴が変装しねぇ手はねぇだろぅがあ。」
「え!!!!でもとっつぁん、俺、ケツ毛とか凄いしぃ…ゴツいしぃ…」
「お前ぇには言ってねぇんだよ近藤。お前には客として入ってもらう。で、トシと総悟は、店員として捜査、よろしくぅ。」
グッと親指を立てて言ってくるこのオッサンの指をへし折ってやりたい。