Bloody Magic!!

□Chart01
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◇prologue 1/?


 朝から降りそうな天気だったが、とうとう降り出したらしい。
 窓を叩き出した雨粒は大きくはないが、春先の雨は冷たいから気をつけないとね。


「よっ、と。これでおーわり」


 進路指導室の資料を見せて貰ってたら、新しい資料を運んできたクラスの先生が「手伝え」の容赦ない一言。資料整理って手間ばっかりかかるもんねえ。まあいいさ。あの先生には借りがあるし。

 整頓の終わった資料の山をぽん、と無意味に叩いてから、椅子を立ち上がる。
 ずっと座りっぱなしで固まった肩を回してたら、指導室の戸が開いて、件の先生が入ってきた。放課後の職員会議が終わったようだ。


「お疲れ様でーす」
「おぉ悪いな谷山姉」
「いーえー。んじゃ、妹が首を長くして待ってますんで」


 横に置いていたカバンを持って立ち上がろうとすると、机にことりと置かれた缶コーヒー。あたたかいの。ぉお、ごほうびだー。


「それ持って、はよ帰れ〜」
「んでは遠慮なく、さよーなら」
「おー」


 あたしがまとめた資料の山を所定の位置に収めながら、先生は後ろ手を振る。
 有り難く缶をカバンにしまい込んで、あたしは部屋を出た。

 どこかの窓が開いているのか、廊下には涼しい風が吹くとともに土の匂いがしていた。
 雰囲気としてはぴったりだろう。


「んー、まだやってるかね?」


 普段使わない指導室からの道のりに、入学したばかりの頃と同じような新鮮さを感じながら視聴覚室へ向かう。

 双子の妹、麻衣は、視聴覚室でクラスメートたちと百物語もどきに興じている。

 そう『もどき』だ。
 私立校の視聴覚室に100人も人が入る訳もなし。人数は置いといても、本当の百物語には様々な『モノ』が必要だし、今巷で流行りの『ひとりかくれんぼ』よりは数倍安全だろーね。
 …うんあれマジやばい。麻衣が興味持っちゃった日にはもうどうしようかと思ったわー。説得の末、何とか事なきを得ました。危ないことダメ絶対。


 カバンを意味もなくぶらぶらさせながら、もうずいぶん暗くなって視界の良くない外を見やった時、不意に麻衣の心が震えるのを感じた。
 どうやら今日はテレパスの調子がいいらしい。ちょっと呼びかけてみようか。


《まーいー、まぁいー。遅れてごめんよ、今から行くねー》


 麻衣の気分が浮上する感覚が伝わってくる。
 何をそんなに怖い話してるんだ。え、浮遊霊とか寄ってこないよな・・・?寄ってきたとしてもあたしにゃ視えんし祓えんし、どーしよーもねーよ?

 何だか心配になってきたので、あたしは足を速めた。
 小走りでひとけのない廊下の角を曲がったところで、視聴覚室の戸口が見える。


 そしてあたしは、早々に速度を緩めざるを得なくなった。





 薄暗い廊下の先に、影法師がふたつ。

 暗視を得意とするあたしの目に映るそのふたりの顔は、白くて美しく、そして、鏡写し。















・・・・・・ぉーふ、












ちょっ、とちょっとちょっと。




ちょっと、あたしっ!!?
ぼんやりしすぎじゃねーの??!!








 くるっと方向転換して、廊下の角に身を隠しつつ頭を抱えてしまうあたしを、誰が責められようか。




 うあああ何で気づかなかったかな!
 『入学したての雨の日の視聴覚室での百物語』!!!
 わっかりやすくわかりやすいスタートの合図じゃーんっ!



 ってゆーか?
 ジーン生きてる?
 アレレ?
 あたし、ちゃんと助けられた??




・・・・・・うっわ、全っっ然覚えがねえよ。








 気がついたら原作の内容は頭からぶっ飛んでるし、麻衣とのテレパス繋がりにくくなってるし、

 ・・・・・・警察の方にちょろっとお世話になる羽目にはなるし?



 あ、タイホされたのではなくてね?
 ウンまあイロイロあるんだよ。逮捕以外でお世話になるって状況。
 例えば、・・・・・・・・・・・・止めとこう。精神衛生上宜しくない。すごく宜しくない。



・・・・・・・・・・・・・・・。


っあぁーーー!!もうっ!

やめやめ止めよう。おっけぃ大丈夫!



身バレしてる訳ないし、大丈夫!多分!

って、『多分』に力入れたらダメだわあ。。。





まあ、やったことに後悔はないんだが、・・・・・・うん、ない。
何も問題ない。

たったひとぉつ。



 彼らが*******だってことを除いては、ね。















・・・ほんと、どうしようか。


麻衣が怯えないといいんだけど、










彼女の

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