メルヘヴン 長編小説

□〜第二章〜 メルの再会
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(っ!?ギンタンっ!?)

ギンタ達がメルヘヴンに到着したちょうどそのとき、カルデア宮殿にいたドロシーは彼の気配を感じて思わず辺りを見回した

「どうした?ドロシー姉さん?」

その様子を見て不審に思ったウィートが声をかける

「あっ…う、ううん…何でもないわ…ギンタンの気配を感じたんだけど…」

「はぁ?そんなことあるはずないだろ?ギンタの世界と行き来できるような強力なディメンションARMはめったにないんだから」

'そんなこと'と一蹴したウィートは再び資料に目を戻した

ドロシーにはもっとしっかりしてほしい、いつまでも過去に…ギンタに囚われていないで
そういう考えが自分の中にあることをウィートは否定できない
だが…

「そう…だよね…そんなはず…」

それでもドロシーが涙をこらえて無理に笑顔を作っているのを見て、フォローしてやりたくなってしまったのだ

「あ〜…そういや、ギンタの世界には'ボウハンカメラ'っていうディメンションARMに似たような道具があるらしい」

「…?」

ひとつ咳払いをして、前にギンタから聞いた話を思い出すウィート
ドロシーは興味を持ってくれたようで静かに耳を傾けていた

「その道具を使うとだな…遠くの映像も自由に見ることができるらしいんだ…前にギンタから聞いたことがある」

もちろん、そういう能力を持ったディメンションARMはメルヘヴンにもいくらでもある
だが、肝心なのはギンタの世界にも同じようなことができる道具があるということをドロシーに知ってもらうことだった

「だからだな…ギンタの気配を感じたというのは…もしかしたらあいつがその'ボウハンカメラ'を使ってドロシー姉さんを見ていたかもしれないと思って…」

そこまで言って、ウィートはチラッっとドロシーを盗み見る

…彼女は少し憂いを帯びた表情を見せて笑っていた

元気付けようとして言ったということはどうやらばれてるらしい

「ありがとねウィート…ダメだなぁ〜私…ギンタンのことになると…」

ふぅ〜っと深呼吸してから瞳を閉じしばらくそのままじっとしていたドロシーだったが、次に瞼を開けたときにはいつもどおりの顔になっていた

「…少しは元気でたかドロシー姉さん」

「えぇ…それに、アナタに聞きたいこともできたわ…」

ドロシーの様子に安心して資料の続きに目を通そうとしたウィートだったが、まさか自分に質問が回ってくるとは思わず
驚いてもう一度彼女に視線を合わせる

「なんだよ?聞きたいことって…」

「その'ボウハンカメラ'って言ったかしら?そんな道具あるなんて、私ギンタンから聞いたこともなかったのよねぇ〜」

ニヤリと笑いを浮かべるドロシー

「なんだよ?信じないってか?けど、これは確かに'私がギンタに聞いた話'だぜ?」

「ううん、そこは信じてるわよ?'あんただけがギンタンから聞いた話'っていうのはね…」

…このころにはウィートにもなんとなくドロシーの言いたいことが分かってきていた
彼女は嫉妬しているのだ

「うすうす思ってたのよねぇ〜…あんたもライバルのうちの一人なんじゃないかって♪」

「安心しろよドロシー姉さん。私とギンタはそんな関係じゃない。その話だってたまたま私だけが聞いただけさ」

「ふ〜ん…」

頬を膨らませるドロシーに、ウィートはやれやれと首を振った

「それより、資料の方全然読んでないだろ?少しは手伝ってくれよ」

「…はぁ〜…そうね…いつまでもサボってるわけにはいかないし」

結果的にドロシーの気分転換にはなったようで、ウィートはこっそりため息をついた



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「この景色…におい…なつかしいなぁ〜…」

「…実際に自分の目で見ると…すごい迫力…」

ギンタと小雪は見晴らしの良い草原を歩いていた

「…それにこの場所…来たことあるような…」

腕を組み自分の記憶をさかのぼって考えるギンタ

「そうなの?私は分からないけど…」

小雪が辺りに咲き乱れている花の一輪を手に取る

「あぁ…間違いない…ここ…2年前にもオレが初めて来た場所だ…っ!」

「えっ!?ほんと!?」

ギンタはもう一度あたりを良く見回し、特徴的な木の実や赤い岩を見つけ確信した

「ドロシー…オレ、帰ってきたぜ…メルヘヴンに…」

「ギンタ…」

ドロシーとはじめて会った場所は、ここからさほど遠くない
気がつくとギンタはその場所に向かって走り出しているのだった

「本当に…懐かしいよ…ここでリングアーマーに襲われたんだっけな…」

ガーディアンを素手で投げ飛ばしたと報告したとき見せたドロシーの驚いた顔を思い出す

(…ははっ、なんだかんだ言ってオレ、小雪の言うとおりドロシーのことばっかり考えてるな…)

「ギンタってば、本当にドロシーのことが好きなんだねぇ〜♪」

「こ、小雪っ!?」

ギンタは今言われた言葉よりも、自分の全力疾走に小雪が楽々ついてきたことに驚いていた

「やっぱりお前も…」

「うん♪これだけ走り回っても全然疲れないよ♪それよりさ、これからどうするのギンタ?」

「そうだな…」

さらにその場でくるくる回りだす小雪を見ながら、ギンタは次の予定を考える

「…ここからだとジャックの家が近いから…よし!挨拶しに行こうぜ!小雪!」

「了解なのだ!」

答えた瞬間、小雪が走り出す

「あっ!おい小雪!お前ジャックの家どこか分かるのかよ!?」

草原に吹くやわらかい風を全身に受け、二人は友の家に向かうのだった



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「…ん?あれ?」

ジャックはパノの作ってくれた弁当を食べながら、近づきつつある気配に気がついた

「どうしたのジャック君?…おいしくなかったかな?」

「いやいやそんなことないッス!この弁当とってもうまいッスよ!」

悲しげな顔を見せるパノにあわてて誤解をとく

「魔力が近づいてくるッス…」

「えっ!?…誰?」

表情に少し警戒の色をにじませるパノと違い、ジャックはその魔力の正体を確信するにつれて顔を輝かせた

「ギンタッス!間違いない!」

「あっ!?ちょっとジャック君!?」

家の扉を空けて畑のさらに奥に目を凝らす

「お〜〜〜い!!!ジャックぅううぅぅうう!!!」

その姿を確認してまもなく彼の耳に懐かしい声も聞こえてくる

「ほ、本当にギンタだ…」

ジャックの後についてきてその隣に並んだパノもこちらに向かってくる懐かしい姿を確認してそうつぶやいた
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