毛探偵(1)

□僕だけの君 *
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どうしたら、あいつの瞳からあの人を逸らせる事が出来るんだろうか?


どうしたら自分だけを見てくれる?


というか、僕はいつから弥太郎に恋愛感情なんて持ち始めたのかな?
僕にとって一番大切で大好きな存在なのは、にーにだけだと思っていたのに…。


どうしてよりによって聡明さんの"器"に心惹かれたんだ…?


【僕だけの君】


「弥太ー!あの鍋取って欲しいっス!」

夏輝が一生懸命背伸びをして吊り戸棚の鍋に手を伸ばすが、届かなかったみたいだ。
弥太郎は無表情のままに易々と戸棚に手を伸ばし、鍋を夏輝に手渡した。

「ありがとっス!弥太!これで夕飯が作れるっス」

「……」

弥太郎は小さくコクンと頷いて、自室に戻ろうと足先を進める。その腕を僕はしっかりと掴んだ。


(……、遥さん…?)


どうかしましたか?とでも言いたげな表情で僕をじっと見つめる。


ああ…。弥太郎の顔は本当に綺麗だ。世間では男前の分類に入るのかも知れないけど、僕はそう思わない。


弥太郎はアホでムッツリで聡明さん馬鹿だけど。可愛くて純粋な奴だ。
その汚れも知らない綺麗な身体を汚したくなる。あの無表情の顔から、羞恥、苦痛、悲しみ…。何でもいいから歪ませてみたい。


そして僕だけを見ていて欲しい。


「ね、弥太郎」

(……?)

「僕、ちょっと疲れちゃったんだ。部屋まで運んでくれない?」

一言命令をすれば、弥太郎は絶対に断れない。こいつは聡明さん程じゃないけど、一応僕にも従順だから簡単に言うことを聞く筈だ。

(分かりました。では遥さん、失礼します)

「……!」


ああ。そう来るんだ。


まさか好きな奴にお姫様抱っこされるとは思わなかった。なんだろう。いくら僕が貧弱でも、流石にこれは情けなく思う。


完全に僕の事を恋愛対象として意識していないな。胸が少しズキッと痛んだけど、それは分かっていた事だから別に構わない。


後で嫌という程に、僕を"恋愛対象"として意識させてあげるから。


───


(遥さん、着きました)


そっと僕をベッドに下ろした途端、弥太郎を自分の方へと引き寄せた。
今まで無表情だった弥太郎の瞳が、少しだけ大きく見開く。

「弥太郎って、本当に従順だよね?」

(は、…るかさん…?)

「僕に対してこれだけ従順なんだから、聡明さんに対しては、もっと従順なのかな…?」

「……ッ!」

無防備すぎる唇を強引に自分の唇と重ねてやる。そして薄く開かれている唇にそっと舌を差し入れてみた。

「……ッ!……っっ!」

自分より大きな身体はビクリと強張り、拒絶するように首を左右に振る。
でも、拒絶する割には手を出す気配がない。

貧弱な僕に怪我をさせないようにって無意識に手で抵抗しないなんて…。


弥太郎はどれだけ優しくて、残酷なんだろう?


自分がどれだけ汚いのか再認識させられる。


「弥太郎…、声を出して?」

「…ッ、」

ふるふると首を横に振って嫌だと拒否する。やっぱり聡明さんの"器"としては、声を出す訳にはいかないって思っているんだ。


そういう所だけは、本当にムカつく…!


「弥太郎、声を聞かせて?お前の声が聞きたい」

「んッ、……っは…!」

舌を強引に絡ませて、貪るような口付けを交わすと、苦しそうに息を吐き出す声が小さく聞こえた。


ああ…――。久々に聞いた。弥太郎の声を。


「弥太郎…、可愛い」

「…ッ、ん…ぅ…!…るか…さ…!」

「好きだよ。愛している」

「は…ぁ、ッ…!」


好きだよ。大好きだ。聡明さんなんかよりもずっと、弥太郎だけを愛している。


だから弥太郎も…。



――あの人だけじゃなくて、僕だけを見て…?







「はっ…、ぁ…!ん…!」


「弥太郎…、此処が気持ち良いの?」


「……るか…さっ…、ん…!はっ…!」


口いっぱいに弥太郎の熱い塊を含み、周囲を舌を這わせて気持ち良くしてやる。
鈴口を舌先で撫でると、弥太郎の身体はびくびくと震えていた。

「ッ…、んんぅ…!」

「もう硬くなってきてるね。自慰をしていないの?」

「ふっ…ぅ、ぅぅ…!」

ちゅ、と少し強く吸い上げると、慌てて自分の口元を手で覆い必死に声を押し殺していた。

その姿に多少ながら苛立ちが募る。弥太郎はどんなに傷付けられても、聡明さんだけを見ている。聡明さんの言い付けだけは必ず守る。

そんな奴なんだって頭の中では分かっているけど、やっぱりムカつくもんはムカつく。
どうしてよりによってお前はあんなオッサンに惹かれているんだよ…!

「…弥太郎。声を出してって言ったよね」

「……!?」

そこら辺に置いてあったネクタイで弥太郎の両手首を縛り付けて、再び弥太郎の自身に思いっきり貪りついた。

「ンンッ…!っ…はぁ…!」

足をパタパタとばたつかせて必死に身を捩る。目尻からは生理的な涙が浮かんでいて、その涙が僕にはとても綺麗な物に見えた。

「弥太郎の涙…、久々に見た」

「……っ」

「もっと泣いてよ。弥太郎の泣く姿…、僕すごく見たいなぁ」

「ふっ…ぁ…!あぁっ…!」

手で周囲を擦り付けながら、再び快楽を与える。
膨張している其処を指先で強く押し付けて、周囲を唇で愛撫して…。弥太郎の自身をめちゃくちゃに攻め立てた。

「っ…!ぁぁっ…!んんっ、ぁっ…!」

「弥太郎の声…、すごく綺麗だよ。もっと聞かせて…」

「は…っ、るか…、さっ…ぁ」

生理的の涙を流しながらやめてやめて心の中で懇願し続ける弥太郎。でも何でだろうなぁ。

酷い事をしているって自覚はあるのに、泣いている弥太郎の姿が愛しく感じる。もっと傷付けて泣かせてやりたいって思ってしまう。

僕って、にーに並みにMかなぁって思っていたんだけど実際は違っていたんだ。弥太郎に対してだけはドSになってしまう。

「弥太郎、嫌がっても無駄だよ。それは余計に僕を煽っているだけだから…。んっ…」

「ああっ…!はっ…!ん…!んんっ…!」

「ほら、出したよ。溜まっているんでしょ?」

「ンンッ!ぅ、あぁぁっ…!はっ、ァァ…!」

先端を軽く甘噛みをした途端、精液が一気に溢れ出てきた。そのせいでシーツはベタベタになってしまう。

「あーあ…、弥太郎のせいで僕のシーツがベタベタだ」

「はぁっ…、はぁっ…!ごめん…なさいっ…!」

身体をカタカタと震わせて、叱られた子供のように泣いて謝っている。その姿がすごく愛らしい。
僕はニコッと天使のような笑顔を見せて、利き手で弥太郎の頬を添える。

「悪いって思ってるなら、弥太郎からキスしてよ」

「……っ」

唐突の要求に驚いたのか、弥太郎の目がこれでもかってくらい大きく見開く。

「口先だけで謝られたって、何も誠意が伝わってこないでしょ?だから…、態度で示してよ」

「……っ」

震えている唇を親指でなぞり、揺れ動く瞳を捕らえるように見つめた。

何も言葉に出さなくても分かっている。自分からキスするのに抵抗感がある事を。
だけど拒否出来ない事も分かっているから、わざと弥太郎が嫌がる事を命令した。性格がねじ曲がっていると思われようとも構わない。

だって、こうでもしないとお前は、いつまで経っても僕を見ようとしないだろう…?

「……っ」

おずおずと唇が近付いてくる。触れそうになると同時に僕は瞼を閉じて来るべき感触を大人しく待つ。


「んっ……」


互いの唇が、微かだけど重なったのが分かる。

緊張と恐怖で弥太郎の唇は細かに震えていたけど、僕は遠慮なしに口内に舌を差し入れる。

「んっ…、んん…!」

反射的に引っ込んでしまう舌を強引に絡ませて、角度を変えた深いキスを交わした。

「んんっ…、んっ…」

「弥太郎も、舌を動かして…。んっ…」

「ふっ…ぁ…!」

逃がさないように頭を押さえ付けて、口腔を舌先でひたすら犯す。
呼吸が上手く出来ないのか、苦しそうに表情を歪ませていたが、遠慮がちに僕の舌を絡ませた。


初めて…キスに応えてくれた…――。


それだけの事なのに、柄にもなく嬉しく思った。

更に奥深くへと舌を押し込み、息をつく暇さえも与えない激しいキスをただひたすら繰り返す。

「ンンッ…!んっ…ぅ…!」

「弥太郎…、んっ…、好き…だよ…」

「んんぅっ…、ふっ…!」

口元から唾液がだらしなく零れてくる。だけどその姿が余計に艶かしくて…、もう我慢なんて出来ないなと思った。

「はっ…ぁ…!」

そっと唇を離し、自分の熱い塊をファスナーの隙間から露にさせ、弥太郎の両足を大きく開かせた。
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