毛探偵(1)

□Sweet Birthday *
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「聡明さん、誕生日おめでとうございます」

「え?」

今日は聡明さんの誕生日の日。
僕は手作りケーキを差し出しながらお祝いの言葉を言うと、聡明さんはポカンと口を開けていた。

「弥太郎、俺の誕生日を覚えていたのか?」

「お、覚えているに決まっていますよ…!」

自分にとってこの人は大切な方なんだ。大切な貴方の誕生日を忘れる筈がない。
すると聡明さんは子供のようにぱぁぁっと明るくなり、唐突に抱き寄せてきた。

「そ、そそ…、聡明さん…!?」

ど、どうしよう…!聡明さんの顔が間近に見える…!
顔を真っ赤に火照らせ、あわあわと動揺を露にする。

「お前はさ〜!何でそんな可愛い事をしてくれるかなぁ!」

「へ…?」

「弥太郎は俺を萌え殺す気か!?」

「も、萌え……ですか…??」

自分には何一つ萌え要素がないように思うけど…。首を傾げながら嬉しそうに笑う聡明さんを見つめる。

「てか、このケーキ。弥太郎の手作り?」

「は、はい…!初めて作ったのでお口に合うか分かりませんが…、味は大丈夫です!ちゃんと味見もしました!」

本当は既製品にするかどうか悩んだけど、夏輝から"大切な人に渡したいなら手作りの方が絶対に良いっス!"と言われた。
だから夏輝に教わりながらこの日の為に、一生懸命ケーキ作りを練習したんだ。

「ばーか。口に合う、合わないの問題じゃないだろ?」

「……ッ!」

手でキツネの形を作って、額にビシリとつつかれる。鋭い痛みに僕は反射的に目を瞑った。

「弥太郎が一生懸命作ってくれたんだろ?だったら、どんな味だろーが全部食うよ」

「そ、聡明…さん…」

「ま、弥太郎の事だから味に心配なんてねぇけどな」

う、嬉しい…。まさかそんな嬉しい事を言って貰えるなんて思っていなかった。
聡明さんに喜んで貰いたかったのに、逆に僕が喜んでしまう。


聡明さんは本当に、色々とずるいです…!


そう思いながら額を擦ると、何かをひらめいたように聡明さんが「お、そうだ!」と言った。

「弥太ー、食べさせて!」

「も、勿論です。聡明さん、口を開けて下さい」

食べやすいようにフォークで一口サイズに切り分けて、聡明さんの口元に差し出すと。

「弥太郎、違う。口じゃなくて」

「え…? っ…!」

グイッと腰を引き寄せられ、また互いの距離が一気に近くなる。
そして唇を耳元に近付けて甘い声で囁いてきた。

「弥太郎の口でさ。食べさせて?」

「く、…口で…ですか…?」

「そう。お前の口で…」

利き手で唇をなぞられ、思わず身体が強張る。
口でって事は、聡明さんは口移しでケーキを食べる事を望まれているんだ。

当然僕はその望みを叶えなければいけない。いけないのだけど…。


「〜〜〜っっ」


流石にそればかりは恥ずかしい。聡明さんとキスは何度かした事はあるけど、自分からは一度もした事がない。


だから、恥ずかしくてなかなか行動に移せなかった。


「なんだよ?弥太。恥ずかしいのか?」

「…そ、それは…っ」

「俺がいつもしてやってるだろ?それと同じ事をすれば良いんだよ」

「そ、聡明…さん…!」

ちゅ、とリップ音を響かせて頬にキスを落とされる。
それだけの行為でも心臓が破裂しそうなくらいドキドキと高鳴る。

「弥太郎…、お前からのキスを誕生日プレゼントとしてくれよ。な?」

「………っ!」

それを言われてしまうと抵抗なんて出来ない。だって僕は最初から誕生日プレゼントは決めていなかった。聡明さんが望む物を渡したかったから…。

「わ、かり…ました…!」

顔を真っ赤にしながらコクコクと頷くと、聡明さんは「やりー!」と言って僕の額にも唇を落とした。

「あ…、それじゃあ…。聡明さん…、口を開けて下さい…」

「おう!あー」

目を瞑って子供のように口を開けた。

「……っ」

僕はケーキを口に含み、ドキドキと心臓を高鳴らせながら、遠慮がちに唇に触れた。

その拍子にいきなり頭を押さえつけられ、触れていただけの唇は深く重なる。

「んっ、んぅ…!」

聡明さんの舌が無遠慮に自分の口内は入ってくる。互いの舌がしっかりと絡み合い、ちゅ、と吸い付かれる。

「そ…、めい…さんっ…!んっ…ふ…ぅ…!」

「弥太…、可愛いな…」

「んっ…ぅぅ…!」

力強く目を瞑りながら、聡明さんのキスを必死に受け入れた。

口内には甘い生クリームの味が広がってくる。それが何だか厭らしく感じて、思考が段々と甘く蕩けていく。


ああ…。この人とのキスはいつだって唐突で、甘くて優しい。


「んん…、んぅ…!」

「やべー…、弥太郎のケーキ…。すっげぇ甘い…」

「ふ…ぅ…!んぅ…っ、む…ぅ」


舌が更に奥まで入り込んできて、息をするのが徐々に苦しくなってくる。
飲みきれなかった唾液が口元から零れていき、僕は聡明さんの肩を思わずポンポンと叩いた。

「ん…、どした?息苦しかった…?」

「はっ…!はぁっ…、はぁっ…」

酸素を取り入れながら呼吸をして、おずおずと聡明さんを見上げた。

「す、みません…!聡明さん。途中で止めてしまい…」

いい加減こういうキスにも慣れないといけないのに、なかなか慣れる事が出来ない。
自分の情けなさにガックリと肩を落として、申し訳なさそうに俯くと。

「ふっ、あはははっ」

軽快の笑い声が聞こえてきた。

「そ、聡明…さん…?」

僕は何かおかしな事をしてしまったのだろうか。おろおろと狼狽えて、「ど、どうしたんですか…!?」と問い掛けた。

「いや、悪い悪い!お前が本当に可愛くて、つい…!」

「…!?」

そんな恥ずかしい事を笑いながら言わないで欲しいと思った。僕の心臓が本当に持たない。

「やーた!」

「えっ…! っ!?」

大きな腕が僕を優しく包み込む。そしてあやすように髪をよしよしと撫でられた。

「別に、無理してキスに慣れなくても良いって。こうやって顔を真っ赤にする弥太郎…、オレはすげぇ気に入っているしさ」

「聡明…さん…」

「それに、その潤んだ瞳も可愛くて好き。なんか…、すげぇそそられる…」

「えっ…、あっ…!」

床にドサッと押し倒される。そして真剣な瞳が僕を真っ直ぐに捉えた。

そして大きな手が器用に服の釦を外していく…。

「まま…、待って…下さい…!聡明さんっ…。ケーキがまだ…」

「ああ、悪い。弥太郎の潤んだ瞳を見てたら、なんか我慢出来なくなった…」

「あっ…!」

首筋を舌で這わされて、思わず変な声が漏れた。
慌てて口を押さえようとすると、聡明さんの手が僕の両手首を掴んだ。

「声を押さえるの禁止な。弥太郎の可愛い声が聞こえねぇから」

「…っっ」

可愛くない。絶対に可愛くないと思ったけど、聡明さんに逆らう事は絶対に出来ない。してはいけない事なんだ。

緊張と恥ずかしさで体が震えていると、聡明さんは髪に優しく唇を落とした。

「大丈夫だって弥太。経験豊富のお父さんに任せておけ…」

「……っ」

「俺がちゃんと気持ち良くさせてやるから…」

「っ…!」

釦を全て外され、肌が露になる。聡明さんの舐めるような熱い視線が痛い程に感じて、反射的に瞼を硬く閉じる。

「相変わらず綺麗だよな。弥太郎の肌は…」

「ん…、ぅ…!」

肌のラインを指先でなぞられ、擽ったさを感じる。
そして尖っている胸の先端に躊躇なくちゅ、と口元に含まれた。

「…ッ…!あっ…」

尖りを舌で転がされた瞬間、身体中が電気のようにビリビリと痺れて、ビクン、と腰が揺れる。

「そ…、めい…、さっ…!ん、んん…!」

「弥太郎、可愛いな。身体がビクビクと震えてる」

「はっ…、ぁ…!っ…ん!」

「そんなに此処が気持ち良いか?ん?」

「はっ…ぁ…!っ…!あッ…」

カリッと軽く甘噛みをされる。そして舌で撫でるように何度も舐められ、時折吸い付かれ…。
頭がぼんやりとしてくる。それに身体中も熱くなってきてるような気がする。

「聡明…さん…!く、擽ったい…ですっ…!」

「気持ち良いの間違いじゃねぇの?弥太郎の此処はすっかり勃ってきてるし」

「やっ…、ぁぁ…!」

ズボン越しに性器を指先でグリグリと弄られて、甲高い自分の声が部屋に響いた。
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