×また子受け
□天の邪鬼
1ページ/2ページ
「また子、何怒ってるでござるか?」
「怒ってないッス」
「はぁ…」
別に、怒ってないもん
天の邪鬼
今日は万斉の誕生日
彼氏の誕生日だし、
プレゼントとか、あれこれ考えてた
喜んでくれるか不安だったけど、
万斉は優しいからきっと喜んでくれる
そう思うと自然と頬が緩んだ
音楽室に向かう足取りは、やけに軽い
それなのに、
「万斉先輩って格好いいよね!!」
その声に、思わず足を止めた
「うん!
あの声、耳元で囁かれたい//」
「今日誕生日みたいだから、
頑張ってクッキー作ってきちゃった♪」
「すごーい!ギター型だ!!」
きゃいきゃいと騒ぐ女子達
そこに、タイミングが良いのか悪いのか、万斉が現れる
「あのっ、万斉先輩っ//」
「む?」
「これ…
今日、誕生日だと聞いて…
作ってきたんです」
「拙者に?」
「はいっ///」
嬉しそうに受け取る万斉
居たたまれなくて、私は逃げ出した
──…けど、元々約束していたため、
現在二人でカラオケに居る
「──…、こ、また子」
「わぁっ!?」
「何に怒ってるかくらい教えてくれぬか」
「別に怒ってないッス!!」
「嘘…」
「クッキー、美味しかったッスか」
「クッキー?
……ああ」
嬉しそうに万斉の口が弧を描く
「嫉妬でござるか」
「違っ…」
「美味しかったでござるよ、中々に」
「なっ…
だったら、あの子達と…」
「でもまた子じゃないと意味がない」
ぎゅうっと抱き締められ、
何も言えない
あ、そうだ、と万斉はギターを取り出す
「新曲、聞いてくれぬか?」
「カラオケで生演奏ッスか」
「防音の有効活用でござる」
「何スかそれ」
自分でも単純だと思う
だけど、事実私はこの馬鹿に惚れてる訳で
「───…」
バラードのラブソング
音楽用語で何て言うのか何て、わからないけど
今、自分の為だけに歌ってるということに
優越感を覚える
堪らず後ろから抱き付くと
珍しく驚いた万斉が振り向く
「誕生日おめでとうッス、万斉」
ふありと微笑んだ万斉は
優しく私を包んでくれた
天の邪鬼な私の愛し方
(こんな私を愛してくれる君が好き)
それは甘い、
鼓動が奏でる恋愛バースデーソング
.