×お妙

□strawberry rain
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真選組局長近藤勲は、
志村妙に惚れている


「お妙さァァァァんっ」
「触んなゴリラァァァァ!!」


そして毎日玉砕している


「…」
「あら、土方さん
こんにちは」
「そこに死んでるのは…」
「ゴリラです」


そして志村妙は、
真選組副長土方十四郎に惚れている


「ゴリラが目を覚ますまで、お茶でもどうぞ

さ、上がって?」
「いや、いい」


そして土方は
毎日妙の誘いを断った


「どうしてですか?
私は、そんなに魅力がないですか?」
「んなこと言ってねぇだろ」
「お茶くらい、いいじゃないですか」
「…仕事中だ」


頑なに、上がろうとはしなかった

それは、自分が慕う上司の思いがあるから


「───…否、そんなの言い訳か」


上がったら、
自分の気持ちを認めることになる気がする


「ほら、近藤さん帰るぞ」
「ん〜お妙さぁん」
「はぁ…ったく、アンタは」


だから土方は毎日ただ、
近藤を引き摺って帰るだけ


───────────…


「あら…雲行きが怪しくなってきたわ…」


洗濯物を取り込んで、
買い物を済ませて…


「…今日は、ゴミの回収が遅いわね」


ぽつぽつと、雨が降り始めた


「あら、卵が無いわ」


外はもう結構降ってるけど…


「でも、卵がないと…」


悩んで、
結局買いに行くことにした


「あら…さっきよりも酷くなってるわ」
「お妙さん、荷物持ちますよ
あ、…ブッ!?」


傘を差し、
死んでるゴリラを一蹴りして帰って行った


「あら…?」


家の直ぐ近く
傘も差さずに門に寄りかかっている人影


「土方さん」


近づきながら話しかけると
ずぶ濡れの土方さんがこっちに顔を少し向ける

その姿が何とも美しく、妖艶で
思わずくらりときた


「──…水も滴るいい男、とはよく言ったものね」


軽く笑うと土方さんは目を反らした


「…近藤さんが、何処にも居ねぇんだが」
「さぁ、どうしたんでしょうね」
「…そうか」


そのまま行ってしまおうとする背中の裾を掴む


「少し、上がっていきませんか?」
「……」
「こんな雨ですし
少しくらい、雨宿りしても」


ね?と首を傾げる
貴方の顔が近付いた


「ん───…」


目と閉じて、何れくらいそうしていただろう

無音の世界に、
君と二人、居る気がした


「──…土方さん」
「…雨のせいだ」


雨の中でお前が、
あまりに綺麗だったんだ


「ふふっ、今頃気づいたんですか?」
「ハッ」
「どうぞ、入って?」
「…誘惑」
「誘惑?
それは貴方もでしょう
男のくせに綺麗なんだから」
「んだよそれ//」


縁側の向こうに見える土砂降りの雨をみて、

妙は思い出したように呟いた


「いちご…」
「いちご?」
「いちごの花言葉、
誘惑ってあるんですよ」
「誘惑、か…」


喉を鳴らして土方は笑った


「いちごの雨、だな」


溢れ出す甘い感情も
今の二人の距離も

全て甘い雨のせいにした


strawberry rain
(あまい、あまい、誘惑の雨が降る)


「──…あ」
「どうした?」


タオルで髪をふきながら
土方は妙に聞いた


「いちごには、
幸福な家庭って意味もあるんですよ」


私達の未来ですね
と言って笑った妙と

顔をいちごの様に真っ赤にした土方は

それはそれは絵になっていた

.
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