×お妙
□お姫様の仕返し
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「お嬢様、こんな所に居らしたんですか」
「あ、土方さん」
ここは志村邸の薔薇園
妙は一人で薔薇を見に来ていたのだ
「探しましたよ」
「何かご用?」
妙が首を傾げると辺りに人が居ないのを確認し、
そっと耳元で土方は囁いた
「ちゃんと俺の傍に居ろよ…」
「っ//」
「どっかの野郎に盗られちまったか、不安になるだろ」
「ば、馬鹿っ//」
「そんな言葉つかっちゃ駄目だろ?姫」
妙と土方は恋仲にある
お嬢様と執事という身の上、勿論極秘だ
「土方さん」
「何だ?」
「その、あの…//」
「ハッキリ言えよ」
「その、…名前で…」
妙がいいかけた瞬間、
土方は妙の口に自らの人差し指を当てる
「あ、土方さん
ここにいらしたんですか」
「どうした」
「明日のパーティーのことで」
「わかった、今行く
お嬢様、失礼致します」
執事らしく礼をする
そして、呼びに来た者が背を向けたのを確認し、振り返った
「後で部屋に行く
待ってろよ、妙」
「っは、はいっ//」
頬にキスをして土方は「では」と去っていった
「心臓がもちません…」
妙の顔は薔薇の様に真っ赤だ
─────────…
「お嬢様、明日のパーティーのお召し物はどちらになさいますか?」
ピンクの華やかなドレスと
黄色のシンプルなドレスを土方は見せる
「どっちが似合うかしら」
「どちらもよくお似合いでございます」
「…」
あくまで事務的な口調で話す土方
「ちゃんと答えて下さい」
「ちゃんと今のも真面目ですよ」
ただ、もう少し述べますと、と
土方は妙の後ろからドレスを妙に合わせる
「こちらのピンクのドレスは可愛らしい薔薇の様、
こちらの黄色のドレスは美しい鳥の様で──…
どっちも見せるのが勿体ねぇ」
高鳴る鼓動
妙は土方を見上げる
「土方さん──…んっ」
「…いっつも無防備すぎだ」
コンコン、とノックの音
土方を呼びに来たのだ
お嬢様専属執事の土方は何かと忙しい
「それではお嬢様、決めておいて下さい
ああ、それから──…」
笑って土方は言った
「ピンクの方が、お嬢様らしいと…
個人的には思います」
入れ替わりにやってきたメイドが持ってきたアクセサリーを
妙は楽しそうに選んだ
頬を朱に染めて
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