×お妙
□お姫様の仕返し
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──────────…
「妙お嬢様、今宵もお美しいですね」
「お嬢様、僕とあちらで話しませんか」
「お嬢様───…」
次々に現れる男を適当に流しながら、
妙はちらちらと土方を見る
彼は執事として忙しそうだが、
女性が話しかける
メイドから令嬢まで
さっきからそれが気になってならない
「妙お嬢様」
「あ、はい─…きゃっ!?」
ドン、とぶつかる
ワインを被ってしまった
「す、すみません!!」
「いえ、こちらこそすみません」
「今すぐに着替えを──…」
「!」
誰かに後ろに引かれたと思うと──…
「土方さん…」
「お嬢様、お怪我は御座いませんか?」
「え、あ、はい」
ワインを拭きながら土方は尋ねる
「このままでは風邪をひきますので、着替えを
皆様方、失礼致します」
そう言うとふわり、土方は妙をお姫様抱っこにして会場を後にした
「土方さん」
着替え終えた妙は土方の表情を伺う
「ありがとうございました」
「お嬢様、ぼーっとしていると何されるかわかりませんので、
お気をつけ下さい」
「はい
…でも、私
土方さんが女性といるのが気になって…」
「それならご安心下さい
私はお嬢様が男性と居るのが気になって他の女性等一目も見ていませんので」
「そ、そう//」
「…嫉妬してたのか?」
「や、そうじゃなく…」
「違うのか?」
妙を引き寄せるとすっぽり胸におさまった
「俺はした」
「…私もです」
会場に流れ出したワルツが聞こえる
「あの、土方さん…ん」
何かを言おうとする妙の口を己の口で塞ぐ
「それは俺が言う台詞だろ?」
「っ…//」
「お嬢様」
膝をつき妙の手を取り見詰め合う
月光だけが二人を照らす
「今宵は執事としてではなく一人の男として
貴女のナイトとして、傍に居させて下さい」
手の甲にキスをして立ち上がり、抱き締める
「私の王子として、傍に居て欲しいわ」
「妙──…」
すると妙は顔をあげ
「土方さん」
「ん───…」
口を離すと
美しく微笑んで土方の耳元で囁いた
「いつものお返しよ」
いつも、ドキドキさせられてばっかりだから──…
フッと妖しく笑う土方は目を合わせて低い声音で言った
「覚悟しろよ」
「え───…」
長い魅惑の夜は
まだ始まったばかり
END.+゚