×お妙

□無音で愛を囁く
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──────────…


「遠慮せず食べてくださいね」


銀さんと神楽ちゃんに卵焼きを1つずつ差し出す


「あ、あとで食べましょう、姉上」
「じ、実は俺らさっき朝飯食ったんだよ」
「全く、しょうがない奴等だな
このタッパーに詰めなさい」


取り敢えずゴリラを殴っておいた


「あれ、旦那じゃねぇですかィ」
「うわっ、むっさい連中のお出ましだよ…」
「こっち来んじゃねーヨサド野郎」


ギャーギャーと騒がしくなるお花見

土方さんは銀さんと何やら言い合っている

私達のことは秘密だから、
仕方がない


「まぁまぁ、皆落ち着いて
ゴリラを何とかしてくれれば私は構いませんよ」
「そうですね、お花見は大勢の方が賑やかですし」
「くそっゴリラどこだ!?」
「お前じゃボケェェェ!!」


もう誰も気にしない

それにしても何だかつまらないわ
神楽ちゃんは沖田さんと喧嘩してるし、

新ちゃんは山崎さん?と話しているし…


「土方さんは銀さんにとられちゃうし」


せめて近くに居てくれてもいいのに、

隊士さんを何人か挟んで、横顔しか見えない


「姐さん、どうかしたんですかィ?」
「沖田さん。いえ、何も
どうしてですか?」
「元気なさそうに見えたんで
ねィ、山崎」
「え?ああ、はい
あんまり食べてませんし」
「そんなこと───…」
「うわっ!?」


ドカッと音をたてて山崎さんが何かにぶつかる


「って…
おい山崎てめぇ邪魔だ」
「す、すみません」
「ったく世話の焼ける野郎でさァ」
「あ?何か言ったか総悟」
「別に
旦那ァ、一緒に飲みやしょうぜェ。山崎も」
「はい」


小さく舌打ちして土方さんが座る

私の直ぐ後ろに
背中を向けて


「あの…副長さん?」
「他の奴と話すな」
「!すみません…」


特に何も話せないけれど
背中から伝わる私より大きな背中の体温

それが温かくて愛おしい

時々こっそりと土方さんが手を握ってくれると

お酒をお酌して
あっという間に日は暮れた


「それじゃあ山崎さん、また」
「うん
今日は突然ごめんね」
「お妙さァん!!また明日!」
「近藤さん行くぞ」


銀さん達と帰路につく
正反対の方向に真選組の皆さんが歩いていく

少し歩いたところで何となく、
立ち止まって振り向いてみる

運命かな、なんて

目が、合って──…


「     」
「──…っ」


ニヤリと笑って
土方さんは歩いていった

紫煙を残して


「──…格好よすぎますっ…//」


明日にでも、
ちゃんと言ってもらおう

口パクを、間違って解釈していたら困るから


無音で愛を囁く
(それは《あいしてる》の5文字)

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