×お妙

□Trick trick trick
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「先生?」
「何高杉なんかに絡まれちゃってんの」
「何、って別に…
同級生と話しちゃいけないんですか?」
「そうじゃなくて

無防備すぎるって先生は言ってるの」
「あの、先生
私次体育で、急がないと…」
「そんなのサボればいいじゃん」
「まあ、先生がサボりを強要ですか?
駄目ですよ、そんなの」


軽くたしなめると、両手を捕まれ、
腰を引き寄せられる


「ちょっと、」
「なぁ、先生と

俺と──…」
「何やってんだよ」
「!土方くん…」
「何って別に、
土方くんには関係ないでしょ

ね、妙」


土方くんに後ろから引き寄せられる
だけど、もう片方の手は先生に捕まれたままで動けない

土方くんに助けを求めるように視線を向けると、

銀八先生を睨んでいた


「妙は俺の女だ

手ぇ出さいで下さい、センセイ」


先生を真っ直ぐに見据える土方くんの低い声が響く

先生は「見せ付けてくれるじゃねぇか畜生」と小さく呟いた

するりと私の右手が解放され、
土方くんに引っ張られるようにその場を去った


「土方くん、ねぇっ
…怒ってる?」


全然返事を返してくれない

教室に入ると同時に始業のチャイムが鳴る


「土方く」
「何やってんだよ」


低い声、怒っているのかと恐る恐る顔を見上げると抱き締められた


「無防備すぎんだよお前

他の野郎に触らせてんじゃねぇ」
「…ごめんなさい

でも、私だって好きであんな状況になった訳じゃないわ」
「…そう、だな

悪ィ、
俺がちゃんと傍に居ればよかった」


名前を呼ぼうとした言葉は土方くんの口の中に溶けて消えた

唇が離れると頬を微かに赤くさせて彼は優しい声で囁いた


「誕生日おめでとう、妙」


ああ、誕生日だったんだ

そんなことをぼんやり考えているとネックレスを付けてくれる


「お前に似合うと思って

いつ渡そうか考えてたら他の奴に先越されそうになって、慌てた」


可愛らしい女物のネックレス

きっと恥ずかしながら私のために選んでくれたんだろう

そんな彼の姿を想像すると可愛くて、
タイミングを計って慌てる彼が愛しくて

それが全部私の為だと思うと優越感と嬉しさがくすぐったくて

その何れもがおかしくて笑った


「なんだよ」
「ふふ、ごめんなさい
土方くんが、かわいくて…」
「可愛くねぇっ!!」
「ふふっ…

ありがとう、とっても嬉しいわ

それとね、土方くん

trick or treat」
「あ?

…ああ、持ってねぇよそんなの」
「まあ、それじゃあトリックを…」
「だが、

そんなもんよりもっと甘いもんくれてやるよ」


もう一度キスをされて、
私と自分の鞄を持つと手を引かれる


「行くぞ」
「何処に?」
「お前が満足出来るような1日過ごそうぜ」
「まあ、デート?」
「そんなとこだ」
「学校は?」
「んなもんサボればいい」
「あらあら、風紀委員なのに」
「うるせぇ

それとも俺と居るのは嫌か?」
「そんなわけないでしょう

私を楽しませて下さいね、王子様」
「上等だ」


靴を履いて裏口から出ると何かを思い出したように土方くんが呟く


「どうしたの?」
「trick or treat」
「え、私も?」
「当然」
「何も持ってないわよ」
「それじゃあ」


ぐっと引き寄せられ爪先立ちになる

耳元に妖艶な声で囁かれる


「“悪戯”するぞ」
「え…」


にやりと笑う彼はまるで悪魔の様だった


Trick or trick
(そんなのよりお前が欲しい)


ちょっとした仕返しに
大好きと思いっきり抱きついてみよう

.
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