×お妙

□俺的理論
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たぶん、この世には理屈や理論何かで説明できないものが沢山ある











「土方さん」
「あ?」
「これ、作ってみたんですけど…

よかったら味見してくれません?」
「オムライスか」
「はい」


すっかり見慣れた目の前の黒いものにマヨをかける

こいつは嫌な顔ひとつせず、
俺の様子を不安気に見ている


「…うん、美味い」
「本当ですか?」
「ああ」
「よかった、私にも一口ください!」
「ほら」


スプーンに一口すくってやるとそのままぱくり、

本人も満足そうに頷く


「お前は卵料理が得意だな」
「ええ
お茶、淹れますね」
「ああ」


嬉しそうに台所へ行くお妙の背中を見ながら、フと考える

俺達はいつからこんな関係になったのか


どちらともなく、と言えばそうなのだが、
俺は一体いつからこの女に惚れた?

近藤さんの想い人


そうとしか見ていなかったこの女に、いつから


正直、言い寄ってくる女はそれなりに居るし、
お妙も美人ではあるが、それ以上の美人なんざこの世には沢山居る


スタイルのいい女も居るし、
色気のある女も居る

もっとおしとやかな女も、
家庭的な女も居るのだ


そんな、本人に言ったら間違いなく串刺しにされる様なことを考える


「はい、どうぞ」
「サンキュー」


丁度いい熱さ、飲みやすい

きっとこれは、コイツなりの気遣いで、優しさ


そんな、細かいとこに気を遣う奴だ


「最近、いいお天気ですよね

桜も咲いて、綺麗です」
「そうだな」
「今度お花見に行きましょうよ」
「ああ

来週、どっか空けとく」
「本当ですか?嬉しいです」


コイツの何処が好きかと聞かれれば、答えられるだろう

だが、コイツじゃなきゃ駄目かと聞かれると───…


「土方さん?」
「ん」
「何考えてたんですか?」
「いや───別に」


まさか、言えるわけがない

本当のことを言えば殺されかねないからな


「何ですか、教えてください」
「別に、大したことじゃ…」
「土方さん」


隣にきて裾を引っ張る

ああ、めんどくせぇ

ごちゃごちゃ考えるのは性に合わねぇな


「土方さ…」
「お前のこと考えてた」


そう言ってキスすると真っ赤になって黙るとことか、愛しくて


きっとコイツじゃなきゃ駄目だと、俺は答える


「好きだ、お妙」


理屈とか理論じゃなく、

お前がいいと思った、ただそれだけのこと


End

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