×お妙

□お昼寝てぃーたいむ
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細い道を通り抜けて行くと噴水のある公園に出た

それほど大きくはないけれど、
草や花の自然が沢山ある公園


「いいところですね」
「あんま人気もねぇから、気に入ってんだ

巡回ルートからも外れてるからのんびりできるし」
「まあ、じゃあ攘夷も多いんじゃありません?」
「大丈夫だよ、この辺で事件なんて聞いたことねぇし、
会ってもねぇから」
「確かに、万が一何かあっても土方さんが居るなら安心ですね」


クスクスと笑えば土方さんも少し笑ってくれた

この人がこういう風に笑うのって、
珍しいかも


「ちょっと座りましょうよ、丁度ベンチもあいてるし、

そろそろ土方さんも煙草を吸いたい頃じゃありません?」


私を気にしてか、
土方さんはさっきからあまり煙草を吸っていない

この公園にはベンチのところに灰皿がある、
そろそろ土方さんもニコチンが切れる頃だろう


「ああ…」
「あ、お茶飲もうかしら
土方さんは、何かお飲みになられます?」
「いや、いい」


がこん、と缶の落ちてくる音
土方さんの隣に腰掛けて口を付ける


「この木、桜の木ですか?」
「ああ、この公園の木、全部そうだよ
春は桜で囲まれて、秋は綺麗に紅葉するんだ」
「まあ、いいですね!
それじゃあ春はお花見に来ましょうか、2人で」
「近藤さんに何か言われそうだな」
「内緒でくれば大丈夫ですよ
秋は、ここで焼き芋でも食べましょう、
甘栗もいいですね」
「くくっ…そうだな」
「あ、今笑いましたね」
「いや、悪ィ
ちゃんとそんな顔もすんだな、と思ってさ」
「へ?」
「年相応の」
「…子供っぽいって意味ですか」
「ちげぇよ、拗ねんなって」
「拗ねてないです」


ああ、こういうところが子供っぽいんだろうなあ

年も心も、この人は大人

だと思う
確かに、負けず嫌いだったり涙もろかったり、子供っぽい一面もあるけれど


「花見も焼き芋も、俺ら休み合うかわかんねぇだろ
今日は偶然合ったけど、俺そんな休みとんねぇし、
お前も忙し…」


肩に体重がかかる
あー、結構マジで寝てんな、これは


「確か総悟と同じ年だったか…」


まだ3時だ、寝かせておこう

どうせこの体制を誰に見られるわけでもないし


お昼寝てぃーたいむ


「ん…あ、え?
あっ、私寝ちゃって…」


目を開くと夕暮れで
慌てて立ち上がろうとして止めた


「きれいな顔…」


いったいどれだけの女性がこの人に思いを寄せているのだろう

いったいどれだけの女性と関係を持って来たのだろう

何だかそう思うと胸が少し


「っ、ん…」
「あ、おはようございます」
「あー、寝てたか」
「はい、私も今起きて、びっくりです」


ひとつ伸びをして欠伸をする顔がかわいい、
なんて、言ったら怒られるかな


「今何時だろう…?」
「あー、と
6時…32分」
「まあ、3時間も寝ちゃってたのね」
「流石に寝過ぎたな」
「そうですね
あ、新ちゃんもう帰ってきてるわ!

いけない、冷蔵庫に今何も入ってないの、買っていかないと」
「げ、俺も近藤さんとか隊士達からすげー連絡来てる
何かトラブったか…」
「まあ、大変
それじゃあ、ここで」
「ああ、じゃあな
あの道を行って、角を右に曲がって二つ目の角曲がればお前ん家の近くに出るから」
「そんなに近くだったんですか、ここ
ありがとうございます」
「いや、俺こそ」


一礼して反対の方向に歩き出す

曲がる前に振り向くと、
同時、目が合った


「土方さん、今度お店にも行らして下さいね」
「んな暇ねぇよ」
「今度また、付き合って下さいね、お昼寝とお散歩」
「…機会があったらな」


そうだ、次土方さんが近藤さんを迎えに来たらお茶を出そう

灰皿を用意しておかなくちゃ


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