×お妙

□金盞花
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私の好きな人には好きな人が居る


「土方くん、おはよう」
「ん、妙、おはよ」
「今日は──…」
「あら、妙ちゃん」


曲がり角の壁に凭れていた土方くんに挨拶して、話を続けようとしたときに現れた人

綺麗で、おしとやかで、優しくて、
女らしい人

沖田くんのお姉さんの、ミツバさんだ
嫌な人ではないし、もちろん私もミツバさんが嫌いなわけじゃない

でも、


「邪魔しちゃった?」
「馬鹿、んなことねぇよ」
「ふふっ
妙ちゃんも一緒に行きましょう」
「え、はい…」


私の好きな人は私より3つ年上の土方くん
ご近所さんで、昔から知っている

でも、土方くんには好きな人が居る
それは、土方くんと同じ年のミツバさん

土方くんが中学生のときにここに引っ越してきた、
病気がちの人


子供な私と大人なあの人
やんちゃな私と美しいあの人

何もかも、あの人の方が上で
きっと、ミツバさんも土方くんが好き


「ケホッゴホッ」
「っ、大丈夫か?」
「大丈夫、ありがとう十四郎さん」
「辛いもの控えろよ?
体に悪いんだから」


寄り添う2人

ほころぶ花のように、儚い女性

私が入る隙なんて、これっぽっちもないの


それでも、と
もしかしたらいつか、土方くんが、振り向いてくれるんじゃないかと

淡い期待を持っていた
だけど、嗚呼、神様酷いわ、こんなの


「土方くんっ…」
「よお、妙」


土方くんはいつもの笑顔で、
ううん、いつも以上の笑顔で振り返って頭を撫でてくれる


「心配してくれたのか?
俺は大丈夫だよ」


ちっとも大丈夫そうじゃない
こんなに悲しそうな顔をしているのに

ねぇ、ミツバさん
どうして死んでしまったの?

酷いわ、こんなの


「妙、大丈夫か?
辛そうだけど」
「私は、大丈夫よっ…」


美しい姿のまま、あなたは土方くんの中にいる
ずっと、ずっと

どうして?神様
死という永遠の美しさに、誰も結ばれない、

永遠に、誰の元にもハッピーエンドは訪れない


「っ、ミツ、バ…」
「──…土方くん」


永久にこの言葉は言えないまま

それぞれの中に、
永遠となり溶け染み渡るのだ

だから、

(ばいばい)

代わりに小さく呟くと、
頬に一筋、涙が流れた


End...
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