×また子受け
□雨と、彼の人を
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「…鬱陶しい雨ッスね」
また子は今日何度めになるかわからない溜め息を吐いた
雨よ彼の人を消さないで
「出張?」
「ああ
仕事で、7日まで行ってくるでござる」
「仕事ってどっちの」
「無論、“こっちの”でござるよ」
こっち、とはつまり鬼兵隊のことだ
1週間の滞在何てのはよくあることだ
それはまた子とて同じことで、
特にそれに対して不満があるわけでもない
ただ、今回はまた、
いつもとは少し違うようだ
「…晋助様も一緒ってことは危ない仕事何スか」
「確かに、ちと厄介な敵ではござるが…」
旅支度を終え、
鞄を持って万斉は立ち上がる
いつもの様にへらりと笑ってまた子の頭に手を乗せた
「まあ、案ずらなくとも、8日には帰ってくる」
「!
べ、別にそれを気にしてるんじゃないッスっ!//」
「はいはい」
「本当に違うッスっ!!」
また子が必死に抗議するのをさらりと交わし、
万斉はひらひらと手を振った
「行ってくるでござる、また子」
「あっ万斉っ」
スタスタと歩いて行ってしまった恋人の背中に慌てて叫ぶ
「行ってらっしゃい!!」
なんだかんだ言いながらもいつも帰ってくるのだ、
今回もきっと大丈夫と、また子は自分の胸を落ち着かせた
ところが、現在は8日、
日ももうじき暮れようかという頃
実際には日など出ていないのだが
また子の気分を映したのか、
今朝から空はどんよりと雲に覆われ、
とうとう雨まで降りだしたのだ
「…遅いッス」
また子は空を眺めたまま手を組み顎を預けた
頭に浮かぶのは戦場
万斉も高杉も勿論強い
それはまた子がよくわかっていることだ
だがそれでも、
盛者必衰とはよくいったもので、
強い者もいつかは負ける時が来る
“死”という最大の敵の前に、
人はいつか敗れ、滅びるのだ
もし、もし彼の人の負ける時が今だったら───…
そう思うと、また子は居てもたってもいられなかった
早く、早く帰ってきて
祈りは強くなり、
やがてその思いは不安を煽り、焦りを与える
「万斉っ…」
「また子さんっ!!」
「武市先輩、何スか
騒がしいッス」
「今、連絡が入って、
万斉さんが…」
「──!」
『そんな、嘘だっ、万斉──…』
ドクンっ…
『いやっ、
いやぁぁあぁあっ───…』
ゴッ
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