×また子受け

□だいすき
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「悪かったでござるよ、また子

おーい、また子ちゃーん」


私は一通り万斉を殴った後、
バンチに座って黙りをきめこんでいる

すると万斉はため息をひとつ吐いて、
財布を取り出しながら言う


「クレープ、何味にするでござるか」
(いちご)


現金でござるな、と笑って、万斉は買いに行ってくれた

何やかんやで優しいところも好きだった
それだけで機嫌が直るのだから、
私は単純だと思う


(もう夕日が見える

1日早かったなあ)


万斉は、今日一日楽しんでくれたのだろうか

鞄をちらりと見る
いつ渡そうかと悩んでいるプレゼント

去年はバイト代を貯めてヘッドホンをプレゼントした
してくれないので気に入らなかったのか不安だったけど、

外だといつ喧嘩を売られて壊れるかわからないから家で使っていると言われた

その証拠に、
前触れもなしに家へ行くと付けてくれている


「待たせた」


ありがとうと打って一口、甘い
私好みの味だと思う

万斉はアイスコーヒーを飲んでいる

幼なじみとはいえ、当然血は繋がって居ないわけで

いつも一緒に馬鹿をやっていても、
万斉はどこか大人っぽくて、

そして将来まで見据えていて
それに向けて今も頑張っていて

来年、私達はあのふざけたクラスと担任のまま学年があがり、受験生となる

何も将来が決まっていない自分に対して
将来を考え努力する幼なじみの彼


どこか遠くへ行ってしまうのではないかと、
私は時々怖くなるのだ


クレープを食べ終わると万斉はもうコーヒーを飲み終わっていて、

行くか、と腰を上げた


「晩飯、何処で食いたい?」
(万斉の好きなとこ)


拙者の好きなところ、と万斉は考える

その後ろ姿に、万斉、と打って


「ん、何でござるか?」


これ、とプレゼントを取り出そうとする

そのとき、ケータイの電池が切れた


「また子?」
(えええええ、ここで切れるッスか、
空気読めよケータイ!!)


万斉は暫く私を見て、
状況を察したらしい


「まあ、今日一日中使ってたし、
よく持った方でござるよ」


そんなこと言ったって、
まだ一番大事なこと言えてないのに!


私は駆け寄り、後ろから万斉の腕を引く

ごそごそと鞄から取り出せば、
万斉も察して待ってくれる


「ありがとう、また子」


開けるよう促すと、
万斉は丁寧にリボンをほどく


「ほう、流石また子、
良いセンスでござるな」


プレゼントはリストバンドとネックレス

この二つなら、喧嘩するときも邪魔にならないと思って


「また子知ってるでござるか?

異性にネックレスを送るのは、
自分に縛り付けておきたいという独占欲の象徴らしい」


万斉は茶化すように言う

しかし、図星だった

離れないでほしい、何年経っても
私は万斉の隣を並んで歩きたい

今のように

他の女と歩くところ何て、見たくない


「…珍しいこともあるものだな」


言わずともわかってくれた万斉は抱き締めてくれた


「拙者も、今度また子にネックレスを買おう

何なら指輪にするでござるか」


そんな一言で私は安心できるから

私達は少し笑って、手をつないで歩き出した


「大丈夫でござるよ、また子

ちゃんと伝わってる」


万斉はあまりに優しく笑うから
恥ずかしくなって背中に抱きつく


歩きにくいと文句を言うから軽く殴ってやった

そして右手の人差し指で大きく文字を書く


「────え」


珍しく驚いてる万斉を振り向かせて
背伸びをして思い切りキスをした


だ い す き
(伝わっていても伝えたい)


私が人魚姫でも 

きっと泡にならずに済むだろう


王子様は心の音色を聞いてくれるから



20130520
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