×また子受け

□告白予行練習
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─────────────────…


『おめでとうございます!
今日の一位は山羊座のあなた』


いつもは気にしないくせに、今日ばかりは思わずガッツポーズをして、テレビに釘付けになる。


『特に恋愛運勢が絶好調。告白するなら今日が吉。
ラッキーカラーは赤です。』


バタバタと駆け出して家中の赤い物を探し出す。

赤いシャーペン、赤いハンカチ、赤いストラップ…
最後に、赤いヘアゴムで髪を結び直す。

下地をして、まゆげ、まつげ、チーク、そして桜色のリップ。


「髪オッケー、メイクオッケー、女子力、よしっ!」


鞄を持って靴を履く。
リボンをもう一度直して、深呼吸をひとつ。


「行ってきます!
ぬぉわ!?」
「…かわいい気のない悲鳴でござるな」


勢いよく扉を出たとたん万斉に激突する。
痛い!メイク崩れる!髪が乱れる!

そういえば毎日家に迎えに来るんだった!

占い一位のくせにいきなりついてないッス!!

こみ上げてきた怒りを静めて慌てて髪を手ぐしで正して万斉と向き合う。


「お、おはようッス」
「おはよう。
今日はずいぶん気合いが入ってるでござるな」
「き、今日くらいいいじゃないッスか、女の子にならせてくれても。
わかってるッスよ、どうせ似合わないとか──」
「似合ってる。かわいいでござるよ、また子」
「へ…」
「まあ、メイクなどしなくてもすっぴんで充分かわいいがな」


何スか、急に。
そんな泣きたくなるようなこと言わないでよっ…。


「…好きッス」
「はいはい、どうぞたくさん練習してくれでござる」


ドキドキと心臓の音が高なる。
待っててね、万斉。

嘘なんかじゃない、本当の言葉を伝えるから。


「ぬぉわ!?」
「だから、もう少しかわいい声出せないのでござるかお主は」
「ちょ、万斉!スピード速いッス!!」
「まだまだ飛ばすでござるよ」
「髪乱れるッス!何で今日に限って自転車なの!?」
「別にー」
「落ちるー!」


楽しい、楽しいよ、万斉。
でも、このままじゃ私はいつまで経っても君の幼馴染みのまま、
彼女にはなれない。


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「はあ…今日一日全っ然授業に集中できなかったッス」


放課後。告白すると決めた時間。

ちらりと万斉を見ると既に荷物をまとめ終わって席を立ち上がった。
はやっ!!どんだけ早いんスかアイツ!

慌てて鞄に荷物を詰め込んで後を追う。


「万斉!」
「また子、告白はどうしたでござるか」
「その前に、もう一回練習させて!」


万斉は笑いながら了承してくれる。
ねぇ、そんなに簡単に承けちゃうのは私が誰に告白してもかまわないから?

嘘なんかじゃない、ホントの言葉を言うよ、よく聞いていてね。


「好き、だよ」
「堅いでござる」
「好き」
「簡潔すぎ。
もっと明るく爽やかな方がいいでござるよ」
「好きなんだYO!家事できないけど」
「ラッパーかお主は。そして欠点は言わない、
ふざけない。」
「…好きです」
「もっと笑顔で」
「好きッス!」
「…うん、やっぱりまた子らしいのが一番いい」
「ありがとうッス」
「じゃ、頑張るでござるよ、応援してるから。
また明日でござる、また子」


ぽん、と頭を撫でて笑顔で歩いていってしまう。

何スか、“応援してるから”って。
応援なんかしないでよ、私が他の男とつき合ってもいいの?

万斉、待って、万斉、行かないで──


「待って!」


立ち止まって振り向く動き、私が深呼吸をする音、
すべてがスローモーションに感じる。

誰もいない渡り廊下、ぎゅうと拳を握る。
今しかない。


「嘘つきでごめんね、
───ずっと前から好きでした」


ぎゅっと目をつむる。体温がどんどん上がる。
声が震えてた。それでも“大好き”を伝えたくて声を出す。


「私が好きなのは、今も昔も、ずっと万斉だけッス!
だから、だから…私とつき合ってくださいっ」


沈黙が流れる。
やっぱり、駄目、かあ。


「まったく、本当にまた子は昔っから…
これ以上好きにさせないでくれ」
「へ?」


瞬発的に顔を上げると、万斉は頬を少しだけ赤くして余裕な笑顔で応えた。


「“こちらこそ”って。
え、えええ!?ほ、本当に!?本当の本当?万斉!」
「こんなときに嘘など吐かぬ。
さ、帰るでござるよ、また子」
「え、ちょ、待って万斉っ!!」


ホントに本当に、これが現実なんだ!
万斉も私のこと──。

いつものように自転車で2人乗り。
荷台に掴まっていた手を、今日はそっと万斉の腰に回してみる。


ドキドキ煩い胸の音、君に聞こえてないかな?
ドキドキ君を想う胸の音、君に聞こえてほしいの。

だから、今日は。
ぎゅっと思い切り抱きついてみるよ、君の背中に耳を当てて。

届くかな?私の胸の音、
聞こえるよ、君の胸の音。

なんだ、よかった、私だけじゃない。


「ねぇ、万斉」









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