螺旋風流 if

□同じ体温
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私は携帯を構いつつ、イライラしていた。



『っっあぁぁああああ!!』



大声を出すと、隣に座っていたカクがビクッとする。

けど、イライラしている私は全くそのことに気付かない。



「ど、どうしたんじゃ、ソラ…」



カクが、私の顔を覗きこむ。

そこで少し、冷静になれた――気でいた。



『携帯が!指に!反応しないの!!』



「そ、それはまた…何故じゃ?」



『知りたい?』



「う、うむ」



『じゃあ後ろ向いて!!』



突然の私の言葉に首を傾げつつも、大人しく背中を向けてくれるカク。

…直後、私はカクの服を思いっきりめくって、背中にぴったり手をくっつけた。



「うおっ!?」



カクの肩が跳ねる。

それも当たり前だ。私の手…指は、今めちゃくちゃ冷たい。

携帯でゲームをしていても、反応しなくてミス連発。

イライラしないほうがおかしい。



『分かったでしょ、こういうこと!』



カクの背中に手をくっつけたまま、喋る。

…カクの鼓動が伝わってくる。

……なんか、早いけど、大丈夫なのか。

と思っていると、カクは私の手を取って服の中から抜き、こちらへ向いた。



「…何故口で言わん」



『実際触ったほうが分かりやすいじゃん』



「…何故背中にした」



…む、なんだか不機嫌なご様子。

だが私も結構不機嫌だ。



『そっちのほうが面白いと思って』



所謂憂さ晴らしだ。

ため息をついたカクは、私を抱き寄せ、背中にすっと手を入れてきた。



『―――っっ!!!!?』



ビックリした私は、ついカクを突き飛ばしてしまう。

直後しまった、と思ってカクの顔を見ると、呆れた顔をしていた。



「…お主が今やったのと同じことをしたまでじゃ」



いや…それは…違うだろ…!!!

…と思ったが、男が女にやるにも、女が男にやるにも、どっちにしてもセクハラだ。

…そうか私はカクにセクハラをしたのか。なるほど。

ぽん、と手を打つ。



『なるほど。同意が得られれば問題ないと』



「…そういうことじゃないわい…」



またため息をつく。

…幸せが2つ逃げた。



「お主はなんか思わんかったんか」



『え、何が』



「わしが手を入れて」



『…ビックリした』



「……本当に、それだけか?」



…実は、ドキドキした。

好きな人からだし。

……でもそんなことは言わない。



『…それだけだよ?』



「では、お主の鼓動が早くなったのもわしの気のせいかのう」



……バレてる。

というか何故あの一瞬で分かる。

怖いんだけど。



「…長い間手を突っ込んでいたお主なら分かるじゃろ、わしの鼓動がどうなっておったか」



『うん、早かった』



「……そういうことじゃ」



『え、いや、あの?…詳しく』



なんとなく気付いてはいた。

普段のカクの様子とか、ずっと見ていた私だから。



「…しょうがないのう。……好きじゃ。お主の…ソラのことが。じゃから…突然ああいうことをされると…困る」



眉間にシワを寄せて、そう言われる。

…何が困るか、想像してしまった私の顔は多分ほんのり赤い。

ぴた、と自分の手を頬につける。

……あれ、あったかい。



「…お主は、どうなんじゃ」



自分の手の温度に驚いていると、カクが真剣な表情で聞いてくる。

…うやむやにせず、ここで決着をつけるつもりなのか。

でも、カクの気持ちも聞いてしまった。

振られるのが怖いから、って逃げることはもうできない。



『……好きだよ』



そう言うと、カクは片方の手で私の手を取り、もう片方の手で私を抱き寄せた。

……あったかい。

手の温度も、いつの間にか同じぐらいになっていた。

――カクと一緒に居れば、ずっと。





同じ体温





((…私、ずっとカクと一緒に居る。…あったかいし))

(…お主は……)






 

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